人嫌い、自己紹介を考える

2人揃ってクラスに入る。何人かはこちらを見てきたが、ほとんどは早速人付き合いを始めていた。座席は番号順になっているらしく、秀人は真ん中だった。


「くそ、ついてないな。周り囲まれてるじゃないか…うぇ。」


「…お隣…みたい。」


「そう、まだ知ってる顔なら平気かも。」


「…蔵野くらの麗華れいか…よろ。」


「自己紹介ってやつ?とりあえず座りたい。よろしく。」


彼女の自己紹介を軽く流し席につく。麗華も後ろについて歩き、確かに秀人の隣に座った。


席についてまもなくチャイムがなり、担任であろう男性が入ってきた。


「おはよう、まずはホームルームだ。この後の入学式について説明する。俺はこの1年3組の担任になった幡山拓斗はたやまたくとだ。質問等は後で受け付ける。」


担任はあっさりと自己紹介を終え、入学式の流れや今日は半日で帰ることなどを伝える。


「では時間だ、2列になって体育館まで行くぞ。」


そうして始まった入学式。特に代わり映えは無いだろう式は着々と進んでいき、何事もなく終わった。クラスに戻ってきた秀人は、この後にやることを考えて頭を抱える。


(自己紹介なんて、名前だけじゃないのか?趣味だとか好きな食べ物だとか、どこまで情報を開示するものなんだ…分からん。)


中学の始まりは名前だけで済ませたところ、周りの反応はざわついており、先生からも言われた。


「もう終わり?何か…他に言いたいこと、ない?」


つまるところ、名前をいうだけでは駄目なのだ。かえって目立つ事になるし、変な奴と思われる事にもなりかねない。後の2年間も名前だけで終わらせてきた秀人にとって、普通の自己紹介は悩みだった。


(周りのやり方を見て学べ、それで良いんだよな。)


始まってみればなんてことはなさそうだ。名前・趣味・好き嫌い等そんなに難しいことではない。秀人にはそう思えた。


(よし、これなら…)


しかし、中にはふざけたことをやる奴もいる。それが秀人の思考を錯乱させるのだった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る