街道整備

馬車の用意、旅程の中継地で食料の確保、比較的安全な中継地の選定。

やるべきことはいろいろある。

商人は行き交っているのでよく商人が休む場所を参考にルートを決める。

ただ、大量の荷物を積んでいる彼らとは違って、荷物が精々必要な量の食料と生徒たちの持ち物くらいしかないので少しくらいは急ぎたいところだ。

魔物と遭遇する可能性も低くないし、いたずらに旅程を長くする理由はない。

さて。


「なんでキリシュがここにいる?」

「何もそんな冷たい言い方しなくても……。折角なので一緒に王国に戻ろうかとしているだけではないですか」

「お前がいるだけで必要な警護レベルがどれだけ跳ね上がると思ってるんだ」


今やキリシュライトは王国では国王に次ぐ重要度を持つ人物だ。

彼が移動するともなれば良からぬことを企むやつらに襲われる確率もぐっと上がるし、それを退けるために護衛の数も格段に増える。

急ぎたいと思案しているところに来られては邪魔なだけである。


「そんなライヤさんに朗報です。今回の僕の帰国はお忍びなので、護衛はつけません」

「それはそれであり得ん」

「えぇ、ですので後ろの方々から幾人か貸していただけないかと」


キリシュライトはライヤの後方へと目を向けながらそんなことを言う。

ライヤの後方に集まっているのはイプシロンを中心とした部隊のリーダー格の面々。

確かに彼らならば下手に数をそろえるよりも確実に仕事をこなすだろう。

しかし。


「そうなると、生徒たちの護衛がきつくなるんだが?」

「僕を守ることはひいては生徒たちの護衛にもつながりますから。うまく紛れると約束しますし、決して負担にならないと誓います」


存在自体が負担だろ、という言葉をすんでのところで飲み込む。

流石にオーバーキルだ。


「……らしくないな? 何を企んでる?」


キリシュライトにしては話の詰め方が甘い。

理屈も通っていないし、急ごしらえで考えた感がひしひしと伝わってくる。


「僕が企んでいるというわけじゃないんですけど」

「そこはどうでもいい」

「はい。実は、この辺りに聖王国との街道をつなごうという計画があるのはご存じですか?」

「初耳だが、妥当だとは思う」


他国を経由せずともいい安全なルートが開拓されるのだ。

諸国連合でも中心的なズンバを経由するのは当然だろうし、キリシュライトやアンがいる関係からもやりやすいだろう。


「その具体的な話が進んでおりまして。聖王国の要人をお連れしなければいけないのです」

「……王子自ら?」


嫌な予感がする。





【あとがき】

ふと気づけば春です。

冬の初めは「今年はクソ寒くなりそうだ」と思っていたのが噓のようです。

あ、家からほとんど出なかっただけか。


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