胸が膨らむ
今回の修学旅行は基本的に希望者だけの参加となった。
落ち着いているとはいえ、敗戦国の人間が王国に足を運ぶのは危険だと考える保護者も少なくなかったためだ。
確かに嫌がらせなどを受けるリスクもなくはない。
それを防ぐために教師陣がいるわけだが。
「参加者十七名に対して教員三名は多すぎでは?」
「いや、こんなものでしょう。二つに分かれて班行動するときにそれぞれに教師がついておく方が安心できますし、ヨルも体調面のカバーで外せないですから」
「ではその間こちら側の生徒はどうするのですか?」
「アンネ先生が出勤してくれるらしいです」
「あー……」
ライヤとともに引率役となるニキーナと計画を立てる。
「基本的な拠点は学園でいいでしょう。三年のS級の生徒たちとは面識がありますし、毎日外出するわけにもいかないですから」
かなり遠距離の移動になるので、折角だからと二週間ほどの日程を予定している。
移動で一週間ほどは消費するが、それでも王国での時間が一週間もある。
学園での授業体験なども含めて学園内だけで終わる日があってもいいだろう。
「クラブ活動も見て回ってもらいたいな。いずれこっちでも発足するだろうし。……あてになるかは別だが」
学園で唯一ライヤが関わりのある某クラブの惨状を思い出し、ため息をつく。
「イリーナが七年になっているし、どうにか改善されていることを祈るしかないな……」
「久しぶりに師匠に会えるんじゃないか?」
「う……!」
キリトとミクの二人も当然修学旅行への参加を早々に決めている。
それはつまり、半年ぶりにキリトがイリーナと会うことを意味する。
「すっかり丸くなってしまって……。あの頃のとがっていたキリトはどこに行ってしまったのか……」
「どういういじりだ……!」
「おとなしくなってしまって……」
「ミクまでやるのか!?」
よよよ、とわざとらしくウソ泣きをするライヤとミク。
すっかりイリーナに調教されたキリトは初めの頃の強気な態度はどこへやら。
イリーナがいなくとも謙虚に振舞うようになっていた。
素晴らしい成長であるし、当然認められるべき行いなのだが、少し物足りないような気がしてしまうのはなぜだろうか。
「冗談はさておくとしても……。半年離れていたのでもはや少し懐かしさもありますね」
「俺は自分の家に帰るのも久しぶりだしな」
「確かに、そうですね。諸国連合から王国に行くことなんてまぁ商人以外ないので皆さんも楽しみでしょう。ただ、私たちがいくときもでしたけど、護衛のほうは……」
「そう、そこなんだよ」
いくらライヤとニキーナが護衛につくといってもカバーできない部分も出てくる。
寝ないというのもどだい無理な話だからだ。
「その辺はどうにかするよ。最悪、イプシロンに頼めばどうにかなる」
ライヤ自身がいない間にズンバに残すことも考えたが、アンとフィオナがいるのに残す意味もあまりない。
なんなら、誰よりも頼りになるだろう。
「王国での予定のめどを立てて、関係各所に連絡するほうが優先だな。アンの名前も借りよう」
権力は、使うためにある。
【あとがき】
卵この頃高すぎません?
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