主導権

「俺たちは帝国に伝手が欲しい」

「だろうね」

「頼むのは帝国の市井の情報。むしろ帝国の内情を調べるなんてことは絶対にしないでくれ」

「はん? 見くびられたもんだね。うちがしくじると?」

「当然だろ? 何をもってあんたらを信頼するって言うんだ?」


お世辞にも友好的とは言えない二人のやり取りが続く。


「ほう。じゃあその信頼できないうちに頼むってのは筋が通らないねぇ?」

「そう言葉尻を捉えるなよ。情報戦はあんたらの本業じゃない。俺が頼むのはあくまであんたらの本業。商売を今まで通り続けること。その上で何の売れ行きがいいとか、そういう情報を貰う事だけだ」


あまりにも情報が少ない帝国。

そんな帝国の生きた情報を得られるのは貴重だ。

何の売れ行きがいいかどうかである程度国の内情は推し量ることが出来る。

娯楽品が良く売れるなら景気は良いし、生活必需品の売り上げすら落ち込むならかなり景気は悪い。

全体的に売り上げが落ちるなら課税額が増えたなどが考えられるし、その他にも得られる情報は多々ある。


「そういう情報もうちの商売道具だとわかった上で聞いてるんだね?」

「もちろん。それに見合う額は用意してきたつもりだ」


ライヤは懐から紙切れを取り出す。

一見落書きしかされていないその紙には、ライヤとキリシュライトが捻出できるぎりぎりの額を絞り出した過程から結論までが記されていた。

歴戦の商人であるギルにはそれがどれだけ破格の額か一瞬で分かった。


「……こんな額じゃ売れないね」

「今これでもいいなって一瞬思ったよな?」

「何の話だろうね? それで? まだ上げれるかい?」


色々ギリギリなドレスから零れそうなその双丘を抱えるように腕組みすると、そんなことを言い出すギル。

搾れるだけ搾り取ろうという考えがないと、商人なんてやっていられないのだろう。


「無理だね」

「……じゃあ、この話はしまいだ。帰んな」

「本当に?」


再び腰をあげようとしたギルはそのライヤの言葉に反応して動きを止める。


「どういうことだい?」

「本当に主導権を握っているのはそっちかなって意味だよ」


にこにこと薄気味悪い笑みを浮かべているライヤを前に、今一度考えるギル。

いや、考えるまでもない。

この額は確かに魅力的だが、これがないと無理だというほどうちは苦労していない。

断ったところで現状維持なだけ。

対して向こうは助力を請いに来た立場。

しかも、


「あんた一人にそんなさせるほどの価値があると?」

「そんなわけないだろ。俺がどれだけ自分を卑下して生きてきたと思ってるんだ」


謎の方向に自信満々なライヤ。

そんな俺も最近周りのおかげで自信というものを得つつあるが、という独り言は胸の内に留めておく。


「ただ、俺は昔から縁には恵まれていてな。例えばこんな面白い噂がある」

「?」

「ライヤ・カサンは聖王国の聖女とただならぬ仲である」




[あとがき]

流石にサボりすぎか。

前も書いたと思うけど、この唐突な書かなきゃ感はなんだろう。


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