相関図
必死になって人物名まで含めて覚えていたライヤだったが、途中で気付いた。
いや、必要ないなと。
一番必要なのは相関関係。
各勢力が誰を抱えていてどういった関係性があるか。
個人名なんて必要ない。
自分が逢うわけでもないのだから。
「これは、また……。凄いですね……」
そして相関関係を示すのに一番わかりやすいのはもちろん相関図である。
だが、図を作るのも簡単ではない。
一度すべてに目を通し、各勢力をどう配置するかなどをある程度まとめなければならない。
これを怠れば、後からすでに書き終えた勢力と近しい存在を忘れていたとして、その存在を追加することが難しくなるからだ。
「ここまでする必要ありました?」
「なんかやってたら楽しくなっちゃって……」
そんな御託はさておき、キリシュライトにライヤが言われているのは、それこそ相関図の事である。
書いて覚えるタイプのライヤはキリシュライトに言ってかなり大きめの部屋を用意してもらっていた。
紙を広げて相関図を書くためだが、やり始めたら止まらなくなり、それこそ文書にあった全ての人物を含めた相関図を完成させていた。
凡そ丸三日。
ライヤが相関図の作成にかけた時間である。
「とりあえず、寝るわ……」
苦笑いのキリシュライトを残してバターン! と倒れて寝息をたて始めるライヤ。
「どう思います?」
「ライヤらしいわ。よいしょ……」
キリシュライトの後ろについてきていたアンは、慣れた様子。
ライヤを背負って廊下のイスへと移動させる。
「それにしても……。凄いですね……」
「ライヤって変なところで凝り性よね。自分が覚えるだけならたぶんここまでの精度は必要ないんだろうけど、他の人に見せるところまで考えるとライヤにとってはここまでしないといけないのかしらね」
「確かに、わかりやすくはありますが……」
かなり広かった部屋が一面紙に埋め尽くされており、端っこまでしっかりと書かれている。
「見ても覚えられなくては意味がないのでは?」
「現場の人間は自分が関わる部分の相関図だけを見ればいいのよ。もちろん、指揮するレベルにある人間は全部覚える必要があるけどね。イプシロン」
「はっ」
アンの呼びかけで陰から姿を現すイプシロン。
「なるほど、違和感を感じていたのは彼ですか……」
「流石です。私が暗殺しようとしていてもご自分で身を守れていたでしょうね」
姿を消したイプシロンを捉えるのは本当に難しい。
ライヤ、アンであっても違和感は覚えるが、明確にここにいると指摘するのは難しいだろう。
気付いていただけでもキリシュライトの技術の高さが伺える。
「あんたは全部覚えておきなさい。私はあまり作戦立案には向いていないから。あんたの方がライヤに近しい視点から意見を言えるでしょ?」
「過分なお言葉、痛み入ります」
「あんたなら覚えられるわよね?」
「2日ほどいただきます」
「十分よ」
それだけ言い残して部屋を後にするアン。
「放っておいていいのですか?」
「あいつなら滅多なことはしないわ。覚えたら勝手に帰るわよ」
「そう簡単に歩き回られていい場所でもないんですが……」
「あれを止めるのは難儀よ? 悪いことは言わないから、あれを察知できるレベルのは最重要のところだけに回しなさい。多少は諦めて穴が無いようにすること」
改めてライヤを背負うアン。
「じゃあ、私は帰るから。ライヤが起きたらまた来るわ。たぶん一日は起きないと思うけど」
「あっ、はい」
スタスタと去っていくアンと、ポツリと残されたキリシュライト。
「あんな感じにずっと部屋が使えなくなるとは思ってなかったんだけどなぁ……」
[あとがき]
ラーメンを食べてきました。
美味すぎてはしごしました。
替え玉もしました。
無事気分が悪くなりました。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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