帰宅
さて、一方家の中に入ったライヤ達。
「こんな家を建てていたんですか……!」
「黙ってて悪かったな。折角だから驚かせようと思って」
唯一何も知らなかったウィルの反応は上々だ。
「キッチン凄いー!」
「お風呂凄い!」
「寝室凄い!」
もう全てが凄いんですこの家!
そりゃ全てオーダーメイドだから希望しか叶っていないわけで。
最高なのはもはや当然である。
だが、その中でやはり気になるのは。
ライヤの寝室の隣の部屋の存在である。
「……なにやってるんですか」
「あんたにはまだ早いわ。ライヤ、ウィルを抑えておいて」
「はいはい」
ライヤに後ろから抱えられ、じたばたともがくがまんざらでもなさそうなウィル。
「じゃあ、確認して来るねー」
3人は本棚をずらせば進める奥の部屋へと消えていった。
要望通りの部屋が出来ているかの確認だろう。
とてもじゃないが、ウィルに見せていい類のものではないはずだ。
ライヤすらも知らされていない部分が多々あるのだから。
およそ20分後。
飽きてライヤとウィルがベッドでゴロゴロしていた頃にやっと部屋から出てきた3人。
「満足したか?」
「えぇ、良い出来だったわ」
「そうか」
すんごい満足げである。
将来の自分に一抹の不安を覚えるが、とりあえず置いておこう。
「じゃあ見学も終わったことだし、皆を招こうか」
生徒たちを家に入れ、ライヤとアンだけで家を出る。
向かうはキリシュライトのところだ。
「やぁ! 逃げずに帰ってきたみたいで安心したよ!」
「俺が逃げたらどうするつもりだったんだ?」
「どうなってたんだろうね?」
相変わらずくつろいでいるマリオット。
お前は国に帰らなくていいのか。
「よし、じゃあこれで一旦僕らはお暇するよ」
そんなライヤの思考を読んだかのようにマリオットは席を立つ。
「流石にそろそろ国内にいないと怪しまれるだろうからね。この情報はここに置いていくけど、頼むから流出なんてさせないでおくれよ? 全面戦争になるからね」
扱いようによってはとんでもないことになる爆弾を置いていきやがった。
マリオットたちが去り、改めて山積みされた紙の束を見る。
「キリシュは目を通したのか」
「一応、ざっとは。ただ、僕ごときじゃ大事な情報を見落としているかもしれませんから、お二人にもちゃんと読んで頂きたいです」
「キリシュがみてるならそれでいいと思うんだけどな……」
だが、これで読まずにいて、後で読めばよかったと後悔することはしたくない。
……。
…………。
………………。
無理じゃね、これ?
自分で文字を読むのはかなり速い方だと自負しているライヤだが、この量の情報に目を通して記憶するのは難しい。
そもそも、目を通すだけで覚えられるような都合の良い頭はもっていないのだ。
ライヤの記憶法は「書いて覚える」なのだから。
「キリシュ」
「はい?」
「帝国農務副大臣は?」
「ダリエル・リゴールですか?」
「正解……。帝国の第一皇子ファンクラブの副リーダーは?」
「マリエ・ティモル」
「正解……」
なんだこいつ……。
[あとがき]
生存確認。
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