夏休みへ
考えてももう仕方ないことは置いておこう。
「よし、合格」
「ありがとうございました!」
学期末のテストが行われていた。
「大丈夫だ。お前が今までやってきたことを見るだけだから。自分に出来ないことをしようとしなくていい。ゆっくり深呼吸しろ」
「すうぅぅ……、ふうぅぅー……」
1人1人に声をかけながらテストをしていく。
学力テストならともかく、これは半分習熟度テストのようなものだ。
答えのわからない問いに無理に答えようとしなくてもいい。
「オッケー、合格だ」
「はい! ありがとうございました!」
最後の一人のテストが終わり、退室する。
「よし、終わりー!」
ライヤは少し前までテスト部屋となっていた小さな仮教室に背中から倒れ込む。
来学期になればちゃんと校舎も完成するだろうし、この天井を見る機会ももうそうないだろう。
「あ、サボってんだ」
「なぜ床に……?」
ガララ、と引き戸が開いてミクとキリトが姿を現す。
「まだ帰ってなかったのか。お前らは最初にしただろ」
「あの時間に家に帰ってもやることないし」
「とか言ってますけど、今週分のイリーナ様からの宿題が丁度終わったところなんですよ。私はその手伝いです」
真面目にやっているようで何よりだ。
「ん? あれ? 提出日は?」
「明日ですね」
「だいぶ余裕で出来るようになってきたな」
「ま、まぁな!」
「今までがひどすぎただけで本来ならもっと早く終わるように宿題作ってくれてると思いますよ。普通の人なら2日どころか3日は余裕があるかと」
容赦のないミクの言葉。
時に事実は下手な罵倒よりも人を傷つける。
「まぁ、余裕が出てきたのはいいことじゃないか? で、二人してどうしたんだ?」
「今日で今学期が一区切りついたじゃないですか」
「まぁ、そうだな」
「ってことは先生は王都に戻るよな?」
「そういうことに? なるのか?」
「とりあえず夏休みに帰りはしますよね?」
「それはもちろん」
流石にウィルが恋しくなっている。
四人でいれば猶更、あと一人足りない気がする。
「私たちも皆に会いたいので、一緒に連れて行ってくれないかと」
「それはいいけど。こっちの友達は良いのか? あんまり二人が友達といる姿を見たことないけど」
「大丈夫です。友達いないので」
「俺たち領主に拾われた子ってことでかなり特殊だからあんまり外に出してもらえなかったんだよな。同世代で会ったことある人なんて両手で数えられるくらいじゃないか?」
諸国連合の領主は王国における王家、その縮小版のようなものだ。
そこで拾われた子となれば確かに事情が特殊かもしれない。
アンもろくに友達いなかったし。
「うるさいわね! 作っていなかっただけよ!」と憤慨するアンの声が聞こえる気がする。
「じゃあ夏休みは一緒に王都に帰るか」
「「お願いします!」」
[あとがき]
働き始めてからもう3か月たつだと……!?
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