出会い

「こんな風に、光魔法で姿を隠しながら風魔法を使っても察知されないくらいのことはできる」


すぐ頭上からの言葉に顔をあげる生徒たち。

見上げた先には宙に胡坐をかいた状態で浮かんでいるライヤ。


「魔法の発動がわからないというのが、どれだけ有用かわかってもらえたか? 言ってしまえば、お前たちの真後ろで俺が魔法を使っても気づかれずに倒されていたというわけだな。あと、もう1つ。この中で一番魔法が上手いのは誰だ?」


1人の男子生徒が手を挙げる。

他薦ならまだしも、自薦なのは凄い自身だな。

まぁ、他の人に異論がなさそうだからいいけども。


「じゃあ、俺に魔法を撃ってみてくれるか?」

「攻撃してもいいんですか?」

「そうだな」


バキンッ! と音がして氷柱を作り出す男子生徒。

言うだけあって、発動のスピードは中々のものだ。


「謝りませんよ?」

「とりあえずやってみろ」



「え……」


自らの手から射出された氷柱はいつの間にか自分の足元に突き刺さっていた。


「こんな感じで相手の魔法の制御を奪う事すら可能だ。自分から離れれば離れるほど魔法の制御が難しくなるのはわかっていると思うが、これは魔力制御が関係している。魔力制御が上手ければうまいほど遠くの魔法でもちゃんとコントロールできるってことだな。逆に、魔力制御を怠るといかに自分に近くても相手の制御が上回ってしまってすぐに制御を奪われる。俺の近くまで氷柱を飛ばして、奪われて返されたのなら反応できただろうが、まさか自分の手を離れた瞬間に奪われるとは思ってなかっただろ? 戦場でそんなことになったら大惨事だ。例えば、規模の大きな魔法を撃とうとしていた時、敵に制御を奪われれば即自軍に着弾だ。そんな悲惨なことにはなりたくないだろ?」


想像し、ごくりと生唾を呑む生徒たち。


「というわけで、魔力制御をやっていくけど、なにか異論は?」


あるわけがなかった。





「先生、ずるいっす」

「ずるいってなんだよ」


2人だけ別メニューのミクとキリト。

他の生徒たちは縄の火をコントロールする初心者向けのものをしている。


「あれだけちゃんと格が違うってことをしてくれれば俺だって先生に突っかからなかったっす」

「結果論に過ぎないだろ。そもそも、自分に教えてくれる存在である先生に突っかかろうとしているのが間違っていると思うんだが?」

「そうですよ? なぜそもそも逆らおうとしているんですか。私たちは敗戦国の人間なのですよ?」

「う……」


ぐぅの音も出ないキリト。

毎度のことながら、ミクの諦観っぷりが凄い。

どこか第三者の目線から物事を見ているような印象を与える。


ボン!


「なんで爆発なんてするんだ……!」


1人の生徒が縄を爆発させて騒ぎになっている場所に駆けていくライヤ。


「キリト君」

「なんだ?」

「私たち、先生に会えてよかったですね」

「……そうだな」

「他にも、お義父様とお義母様に拾って頂いたり。素晴らしい出会いしかありません」





[あとがき]

初休み。


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