対照的な二組
「私は怒っています」
教師陣が保護者達への挨拶を終え、学園へと帰還。
そのまま学園長室へと向かおうとするところを職員室前に待機していた学園長に捕まった。
笑ってはいるが、明らかに目に光が宿っていない。
「国営という事で我慢していましたが、もう限界です。明日にでも国王に直訴します」
「何をするんです?」
「学園の運営を任せてもらうように言います」
「……しかし、王国から運営費は出ているんですよね? 費用だけ出してもらってあとは口を出すなというのは難しいのでは?」
「そんなことを言う権利が今の王国にありますか?」
「……」
教師陣を見回す学園長。
心なしかアンネ先生に視線を向ける時間が長かったように感じたが、気のせいではないだろう。
アンに国王の姿を重ねているのだろうか。
「ともかく、今ならば独立した運営を手に入れられるように掛け合う価値はあります。2年生のA
「お帰りなさい、アン王女」
「ヘラルド。首尾の方は?」
「上々です。これでまた王国をより良い方向へ導けると思うと、長生きした甲斐がありますなぁ」
アンは変装を解き、王城へと戻る。
そのアンを部屋で迎えたのはタット・ヘラルド元軍務大臣。
今はアンの政治面での参謀として働いていた。
アンは彼との話し合いをもとに解体された暗部から吸収したフィオナと、宙ぶらりんの状態で浮いていたイプシロンたちB
王国をより住みやすい国にするため。
ライヤにも王様にも言っていない、アンの秘密である。
今回の事件で一部の腐敗した貴族たちの排除には成功する。
仮にも学園の行事を左右する影響力を持った人物たちだ。
尻尾を掴むのはそう簡単なことではなかったが、そこはタットの出番。
上手くやってくれた。
「実際にああなるとは思ってませんでしたけど。そちらは何もわからなかったのですか?」
「残念ながら、魔物の方については……」
「仕方ないわ。あなたじゃ出来ることが限られているもの。それにむしろ、そういう考察はライヤの方が得意かしらね」
「お気遣い感謝いたします。また、ライヤ殿の方が得意だというのも同意です。あの方なら仮説を立ててくれるでしょう」
「それはまた今度よ。とりあえず、動くわ」
「御意に」
体育祭以降、アンがあまりライヤの下に姿を現さなくなった。
フィオナもライヤが家にいる間にはお世話をしてくれるが、日中などは忙しくしているようだ。
しかし、ライヤはツッコまない。
巻き込まれたくないからだ。
「もうすぐ春休みですねー」
「今年は何もないといいな」
「また海水浴に行きませんか?」
「エウレアのところか?」
「私も行きたいです! ライヤさんに出会った記念すべき場所ですから!」
「出会いはろくでもなかった気がするけど?」
「出会いは出会いなんです!」
結果、自然とヨルとウィルと過ごす時間が多くなる。
これ幸いと2人も普段よりも甘えるようになった。
「アンさんはいつまで忙しいんですかね?」
「さぁな。王国の人事が大きく動いてるっぽいからその関係なんだろうけど。俺には関係ない話だ。ウィルは大丈夫なのか? 巻き込まれたりとか」
「私に助けを求めて嘆願書を送ってくる人もいますけど、私まだ10歳ですし。第三王女で権限も大きくないのでむしろ突っぱねる理由があって楽です」
「ってことはイリーナが忙しいのか?」
「あとはキリシュライト兄さまですね。アン姉さまが継承権を放棄していますし、カムイ兄さまは謹慎中です。となると、残るは2人だけですから」
「でも、キリシュはダメだろ」
「はい、聞く耳も持たないそうです」
キリシュライトは王国の第二王子。
現在7年生で清廉潔白の代名詞のような人物だ。
誰にでも分け隔てなく接し、悪口を言ったところなど誰も見たことがない。
だが、正義感が強すぎるが故に暴走することも間々ある。
「今回のことなんて一番あいつが張り切りそうだけど」
「それもアン姉さまが止めてるみたいですよ? ややこしくなるからって」
「それが正解かもな」
駄弁りながら、ソファで3人並んでゴロゴロする。
「そう言えばさ」
「はい?」
「そろそろテストだけど、大丈夫か……」
「……」
まずいな、これ。
[あとがき]
活動報告にも書きましたが、遂に2桁順位です!
めでたい!
右腕のすじイタイ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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