教師への注目

「ヴィヨン先生、そいつらが主犯格ですか?」

「子供にどうにかできる範囲は超えているから、親が関わっているのはほぼ間違いはないだろう。先生方には俺の生徒が迷惑をかけて申し訳ない」

「そんな次元の話ではないと思いますけどね……」


戦況が落ち着き、周りの軍も到着して王国軍だけで魔物への対処が可能になってきたので教師陣は退いた。

元々、彼らの仕事だ。


「どういう裁定が下されると思います?」

「去年と同じ程度か、それ以上ではないだろうか。証拠があるのかにもよるだろうが、生徒たちが関与していたのは紛れもない事実。そしてその関与も意図的なものであり、利用されたものではない。それを鑑みると、去年よりは重いのが妥当だろう」

「俺もそう思います」


本人たちも王都を騒がせてやろうとはしていないと思うが、由緒ある体育祭を自分の利益のために台無しにしたというのは罪が大きい。

意図していないにしろ、王都にも被害が出る可能性があったのだ。

最悪、家が取り潰されるだろう。


「まぁ、それは俺たちの仕事じゃありませんね」

「その通りだ。だが、軍にそのまま預けるというのも気が引ける」


ヴィヨンは地面に転がっている王国軍の面々を見下ろす。

彼らはドウェインに協力していた派閥であり、魔物たちが襲って来た時にも戦おうとはしなかった。

戦うなとの命令があったのか、単に動けなかっただけなのかはわからないが、職務を全うしていない。

軍の命令にも背いている。

今回に関しては王の命に背いたのに等しい。

厳しい処罰が下るだろう。


「そいつらはヴィヨン先生が?」

「まぁ。ろくに戦いにすらならなかったがな。簡単に軍規を違反するような奴らだ。まともに訓練もしていないだろう」


相当に毒舌である。

生徒たちが関わっていたのが相当心にきてるんだろうな。


「俺への抵抗も微々たるものだった。この練度でよくこのような大事をしでかせたものだと感心している」

「微々たるもの……?」


軍の兵士たちが転がっている地面は凍っていたり、燃えていたり、はたまたぬかるんでいたりする。

ヴィヨンがやったのだろうが、抵抗がなければここまでする必要はないだろう。

怒りに任せてやったのではない、と思いたいが、その頃ライヤ達は壁の向こう側にいたので真相など知りようもない。


「ヴィヨン先生の責任ではありません。私の義弟が起こしたことです。責任は私が負うべきでしょう。私程度の命で済めばよいのですが……」

「それこそ、ニキーナ先生のせいでもあるまい。確か、あなたは教師となってから学園の女性教員寮に住んでいたのではなかったか?」

「それはそうですが……。一族が処罰の対象となるのは当然のことです」

「……まぁ、それもここで話す内容ではない」

「そうですね。あとは軍の方々に任せて俺たちは会場に戻りましょう。保護者達からのお怒りの言葉を聞かなければいけないですからね」





「凄かったぞー!」

「格好良かったわー!」


ライヤを含めた教師陣が会場に戻ると、保護者達から万雷の拍手が送られた。

送られている当の本人たちは唖然としている。


「どうなってんだこれは……」

「皆さんのような先生方がいるなら、俺たちも子供を安心して預けられるぞー!」


どこかの父親の声を聴いて、教師陣は察する。

今回は体育祭という場ではあったが、授業参観には自分の子供たちの学校での様子を見る以外にも保護者にはすることがある。

自分の子のクラスには他にどんな子がいるのかを見ること、そして先生はどんな人なのかを見ることだ。

だが、授業参観では主役はあくまで生徒たち。

教師の人となりはともかく、実力なんて知る由もない。

勉強だけではなく、戦いの技術を教える学園において、教師がどれだけ強いのかというのは生徒の成長にも直結する。

そんな教師陣の実力を目の当たりにしたのだ。

彼らの想像など超える実力を。

興奮するのも仕方のないことだろう。


「ひとまずこの場は解散になるわ。先生方は少しだけ保護者の方々に顔をお見せしてから学園に戻ってくるように。今後の協議をするわ」


こうして教師陣に注目が集まるという世にも珍しい光景が生まれたのだった。





[あとがき]

週間ランキングで104位まで来ました!

2桁まであとちょっと!

そして筋肉痛が凄い。


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