勝負の1週間

「今年は変則的な一年だったとはいえ、テストは変わらずやってくるぞ」

「「……」」

「ダメそうだな」

「先生も少し前まで忘れてましたよね?」

「ソンナコトナイヨ?」


確かに生徒たちの誰よりも忙しかっただろう。

夏頃なんてミリアリアの対応でいっぱいいっぱいだった。


「とにかく、テストを作るだけの俺とは違ってお前たちは勉強しなくちゃな」

「そんなこと先生が言っていいんですか?」

「良くはないけど、禁止されてることでもないだろ」

「今年も先生と戦えるんですか?」


ワクワクした顔で聞いてくるゲイル。

確かに今年も戦わなければいけない。


「まぁ、そうなるな」

「よぉし! 今年こそ一発入れるぞ!」


気合いの入っているゲイル。


「そんなことよりまずは勉強な」

「はい……」

「あの、先生と戦うっていうのは……?」


ミクが手を挙げる。

確かに。

ミクとキリトはまだ学年末テストを経験していない。


「学年末テストは普通の学力テストとは別に、実戦テストがあるんだ。内容は教師と1対1で戦う事。もちろん、勝つことが合格条件でもないし、実戦テストで落ちるなんてことはまずないと思ってもらっていい。あまりにもやる気がないとかだと話は別だけどな」

「去年もあったんですか?」

「もちろんだ。結構前からあるんじゃないか?」


もちろんライヤが一年生の時もあったし、それより前にもあったと聞く。


「去年はゲイル君が傷一つつけられなかったと……?」

「いや、そりゃSクラスとBクラスとはいえ、教師と1年生だぞ? そう簡単にはやられないだろ」

「いえ、そういう意味で言ったのではなく……」

「ちなんでおくと、去年誰にも……」

「先生?」

「……ウィル以外には一発もいれられてない。それもかすっただけだしな」

「先生ってば負けず嫌いですねぇ」

「あれはお前がプロポーズとかしてくるから……!」

「作戦のうちですもーん」


ぎゃいぎゃいと騒ぎ始めるライヤとウィルをよそに、ミクは祈りをささげる。


「(テストの後にどうか五体満足でいられますように……)」


「先生、遠慮はいらないんだよな?」

「もちろんだ。イリーナの指導によってどのくらい成長したのかは俺も気になってるしな」


一方、やる気をゲイルと同様にみなぎらせているのはキリト。

態度が軟化したとはいえ、ライヤにコテンパンに負かされた経験が消えるわけではない。

公式に雪辱の機会があるとなれば気合も入るだろう。


「けど、何回も言うけど。まずは勉強な? そっちのテストの点が足りない分は俺じゃどうにもならないから」

「実戦テストでボーナス点とかは?」

「ない」

「……ミク、助けてくれ」

「はいはい。今日から帰ったら勉強するわよ」


生徒たちにとって、勝負の1週間が始まる。





[あとがき]

テスト期間はいつも憂鬱。


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