怒涛の後半戦
「ミリアリアが来ていたことによって俺たち学園のスケジュールも大幅に調整された。その結果色んな予定が後半にはギュギュっと詰められてるわけだけど。まずは授業参観だ」
本来ならもっと早く行われる予定だった。
しかし、ミリアリアが居座る期間が長く、ずれ込んでいるのだ。
「急な連絡で顔を出せない親御さんもいるだろうが、そこは我慢してくれ。まだ体育祭も残ってるからな」
ミリアリア、そして聖王国の使節団の応対に追われていた王国は警備に人員を割かなければいけない体育祭を先延ばしにしていたのだ。
「で、何をしようかという話なんだけど。普通の授業でもいいんだけど、ちょっとつまらないよな?」
自分の子供たちの授業での様子を見に来るのが授業参観だ。
やはり、子供たちがどれだけ魔法を上達させているかが気になるのではないだろうか。
「ということで、今年も魔法学の授業を見せようと思う。去年はいなかった2人も増えてることだし。……そういえば、キリトとミクの保護者は来るのか?」
「来ようと張り切っていたと思います。案内を送ってから手紙が返ってくるのも恐らく即座に送り返したくらいの早さでしたし」
「そうか、それはいいことだ」
半分王国の人質のような立場にあるキリトとミクが元気にしている様子を見せられるのはいいことだろう。
「……ちなみに、ちゃんと手紙に書いたか?」
「はい。先生に関してはちゃんと好意的な意見を書かせていただきました」
「なら、良かった……」
思い出すのは去年の決闘騒動。
次は親御さんと決闘とかなったら目も当てられない。
「で、折角なら成長を見せたいよな?」
「去年から1年とちょっと経ちましたが、魔力制御がここまで上達しました」
「お母様、みて下さい!」
「見てるわよ~」
選んだのは風魔法による浮遊。
そして飛行の実践。
去年はそのとっかかりとなる部分しか見せられなかった。
あとはシャロンが暴発で天高く上がったことくらいか。
自由自在となるには程遠いが、浮けるだけでも5年生くらいには匹敵する。
ほんわかと笑っている王妃以外は驚いている様子。
「先生! うちの子たちが苦手としているように見えますが!」
「これは苦手としているわけではなく、単純に魔力制御の差です。俺の生徒となってから他の子たちは1年半近く魔法制御を鍛えています。キリトとミクはこちらに来てからまだ半年ほどでしょう? 上達していくほどに伸びにくくなるとはいえ、まだまだ互いに伸び盛りですから。そう簡単には追い付けません」
「むぅ……」
キリトとミクの保護者として来た方は人のよさそうなおじさまだった。
授業に口をだしはするが、全て2人を気遣ってのもの。
大事に思っているのがよくわかる。
「お養父様、仕方ないことだとあれほど……」
「う、すまん。こっちではあれほど優秀だったお前たちだからな……」
「優秀というのは少し違います。才能に恵まれていただけの話です。そこから研鑽を積まなければ簡単に追い抜かれてしまうのです。ね、キリト」
「そうだな……」
キリトもかなり丸くなり、謙虚に授業を聞いてくれるようになってきた。
未だ学力は水準に達していないが、イリーナが辛抱強く教えてくれているおかげでかなり改善された。
「シャロン、大丈夫か?」
「……ぁい……」
シャロンは1年生の時に暴発したトラウマがあるらしく、浮けて精々が1メートルだ。
かなり上手く飛べているので高度を上げても大丈夫だろうが、頑なにしない。
「こんなことも出来ます!」
「あらあら~」
逆に怖いもの知らずなのがウィル。
今も王妃に空中での宙返りを披露している。
動きが大きいので他の親御さんの目も引いている。
「……先生」
「なんでしょう、カリギュー殿」
腕を組んで生徒たちを見ていたゲイルの父親が口を開く。
「先生は、我が子たちが戦場に出た時に飛行魔法の運用をお考えか」
一気に空気がピリッとする。
学園はあくまで学園である。
だが、卒業生の中で軍に進む者が多いのもまた事実。
「取り繕っても意味がないので白状しますが、はい。飛行魔法が有用なのは見ての通りでしょう」
「ふむ」
「ただ、同時に飛びながらの戦闘は難しいだろうとも思っています。保護者の皆様も承知のことだとは思いますが」
飛行に使う魔力制御のリソースは大きい。
飛行しながら剣を振るう程度なら可能だが、他に魔法を使うとなると難しいだろう。
「よって、移動用と考えています。行軍速度が早ければ早いほどいいのは言うまでもありませんし、戦争でなくとも早く移動できるのは役に立ちませんか?」
実際は貴族には護衛がつくと思われるので難しいだろうが。
「そんなわけで、覚えておいて損はないと思って教えている次第です」
「……そうか。失礼した。授業を続けてくれ」
「はい。じゃあみんな、集合! 武器もってやってみようか!」
[あとがき]
健康に影響なく美味しいカップ麺が出来たら覇権を握ると思う。
何でもそうか。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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