第二回保護者会議

「いいんでしょうか、私のような者がこのような場に……」

「構うものか。ここでは皆、子を想う親でしかないのだ」


授業参観後、とある高級料亭で保護者達による会合が行われていた。

王妃を除いて、だが。


「王妃様はいらっしゃらないようですが……」

「別にいいだろう。元々公式なものではないのだ。突発的に集まったに過ぎない」


キリトとミクの保護者は口をつぐむ。

これだけの貴族が何の予定の調整もなく集まれるはずがない。

恐らく自分も予定が合わなければここには居合わせなかっただろう。

改めて、自分の王国での立ち位置を実感する。


「今回集まってもらったのは、もちろんライヤ殿についてだ」


ライヤも貴族になってから他の貴族もライヤに対して敬称をつけるようになっている。


「アン王女とフィオナ・ストラス嬢。そしてヨル・コンバート嬢を娶ったと」

「3人も!?」

「あぁ、あなたには初耳かもしれない。今言った通りだが、ライヤ殿は3人も嫁に迎えた。その3人とも、王国への影響力は大きいと言っていい」

「……」


ゲイルの父が話を続ける中、キリトとミクの保護者は他の懸念に脳を支配されていた。


「加えて、子供たちも彼に懐いている」

「すると、カリギュー殿はこう言いたいのかしら?」


ゲイルの父だけが話していた場にシャロンの母が口を挟む。

言うまでもなく王妃の妹ではあるが、あくまで妹。

発言力はそれほど大きくない。


「ライヤ・カサン殿が派閥を形成しようとすればすぐにでも強大になるだろうと?」

「……そこまでは言っていない」

「同じようなものでしょう。まぁ、皆さん似たような懸念はあるかと思いますが」


王女の嫁ぎ先なのだ。

王家に縁を持ち、王国内での発言力を高める。

実際に行動に移したことがあるかはともかく、貴族ならば一度は考えることである。


「……我々は聞かない方がいいのでは?」


ティム、エウレアの親が席を立つ。

彼らは代々王家に仕える身であり、その待遇に不満もない。

そして彼らは王家に忠誠を誓っており、政的な派閥では中立である。


「いえ、そのままで。何もライヤ殿を排除しようなどと思っているわけではありません。ライヤ殿がどう思っていようと、というお話しです」


ゲイルの父もティム、エウレアの親に対しては敬語となる。


「と、言うと?」

「ライヤ殿は貴族となったとはいえ、未だ18歳。社会経験も少ない。元々、ライヤ殿は貴族への対抗心、と言うだろうか。反骨精神の強い方だと息子から聞いている。あれほどアン王女と関わっておきながら自ら積極的に貴族と関わることがなかったとも。つまり、腹芸が苦手なのではないだろうか」

「利用される恐れがあると?」

「ふむ、確かに……」


デラロサ、マロンの親が同意を示す。

もちろん、ゲイルの父の仕込みだが、それがなくとも他の親たちも同意を示しただろう。


「今更、彼に対してわだかまりのようなものはない。息子も良くしてもらっている。どうだろうか、ここは我ら協力して彼を守るというのは……」

「必要ですかねぇ?」

「ほう?」


にこりと笑いながらエウレアの母が発言する。


「私はフィオナ嬢と関わりがありますが、うちの子が男の子であれば嫁に欲しいほどいい女ですよ、あれは。あの子がいればそうそう腹芸にしてやられることはないでしょう」


他の親たちは怪訝な顔をするが、ゲイルの父だけは言葉の意味を正確に把握していた。


「(マルクス家とつながりがあるとなれば、暗部か。確かに、暗部となれば情報収集も難しくないだろう)」

「ですが、ライヤ殿の周りの者として私の子たちが狙われる可能性は……」


王国の内情に詳しくないキリトとミクの養父は心配そうに口を挟むが、バッサリときられる。


「気を悪くしないで欲しいのだが、貴殿の子たちの王国での立場は低い。ライヤ殿がどう思っているかは知らないが、いざとなれば見捨てられるほどに。敢えて勝算の低いところを狙うことは無いだろう」

「ふぅ……。あ! 申し訳ありません……!」

「構わないよ。親であれば子の心配をするのは当然だ」


「では、各々我が子には一層の関心をもって接してください。どこかの馬鹿がやらかすとも限らないので」


その緊迫した空気とは裏腹に、会合は綺麗な終わり方をしたのだった。





[あとがき]

麻雀始めました(ルールいまいちわからん)。


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