忘れていた課外学習
「学園長、他クラスとの交流戦とかしても大丈夫ですか? 何なら、他学年でも構わないです」
「その心は?」
「流石にクラス内だけで向上心を持ち続けろと言うのも無理があります。端的に言えば、刺激が欲しいんです」
競争相手もはっきりしないのにとりあえず鍛えろと言うのは無理がある。
そんなことが出来るのは一部の格闘家くらいではないだろうか。
自らを律し、自らの限界を超える。
凄いことだとは思うが、同時に出来るわけないなとも思う。
「他クラスを提案したのは、ちょうどよくS
「……どの学年でも共通してその問題はありますからね……」
学年内の不和。
第一位はS・A
第二位はS
ちなみにそれ以外は基本的にない。
「不和が解消されないのは互いに関わりを持たないからだと思います。相手のことを知らないままでは仲良くなれるものもなれないでしょう」
「より溝が深まる可能性は?」
「そいつらは放っておいてもどうせ社会に出たタイミングでより仲悪くなりますよ。今だから顔を合わせてないだけなんですから。でも、相手に特別嫌な感情を抱いていないのに情報がないから敬遠しているままなのは学校として何とかしてもいいのでは?」
「ふむ……」
学園長はその綺麗な顔立ちをわずかに思案に曇らせる。
「確かに、学園をコミュニケーションの場として扱ったことは無かったかもしれません」
「勉強を教えるのは大切ですが、たかがクラス分けの結果で生徒同士の不和が起こってしまうのはどうかと」
「言われてみればそうね。その解決策が交流戦?」
「はい。終了後は互いに意見を出し合う時間を設けようかと思っています」
「……喧嘩にならないかしら?」
「喧嘩程度なら可愛いものでしょう」
「いいでしょう。予定しておきます。ただ、すぐには行えませんよ?」
「もちろんです。何なら、3年生になってからでもいいかもしれません。学年途中で変更するのは難しいでしょうし」
「来年はライヤ先生がS
「それはそうですが。まぁ、その時はその時です」
だが、ライヤは十中八九来年も担任できるだろうと踏んでいた。
ライヤとウィルの関係をウィルが恐らく意図的に漏らした以上、彼らの動向には気を付けなければいけない。
その監視役として、当事者であるライヤが担任ならば先生から漏れるということがなくなるからだ。
それはそれとして。
生徒たちの仲が悪いのが嫌なのも本音だった。
「今年の課外授業で行きたいところとかあるか?」
「それって生徒に選ぶ権利があるんですか?」
もう11月になろうかという日。
ライヤがクラスで言い出したことだ。
「いや、決定権はないけど」
「なんですか」
「担任が候補を出すんだけどさ。別にないんだよなぁー」
つまり、ライヤが考えるのが面倒だったのである。
この頃忙しくて忘れていたというのもある。
「だから、採用するかはともかく行きたいところないか? もちろん、授業の一環だからな?」
海に遊びに行きたいとか言われても困る。
遠いし。
うーんと悩む生徒たち。
「あ、俺! 王城に行ってみたいです!」
「なるほど」
ゲイルは王城を提案した。
興味を示したのはデラロサとマロン。
この3人は貴族とはいえ王城に足を踏み入れたことは無いだろうから、当然か。
「でも、王城ってウィルの家なんだよな。ティムとエウレアも出入りしてるし、シャロンもだっけ?」
「……ぁ、はい……。……おばさまに会いに……」
「だよな? ってことで有力候補にはならないかな」
「じゃあー、お菓子屋さんはー?」
マロンの提案にギラリと目を光らせる女子陣。
ウィル、エウレア、シャロンもやはり女の子という事か。
「確かにお菓子の製造工程とかは勉強になるだろうな。職人さんの技術を見るっていうのもあんまりない機会だし。割と良い案だな」
「やったー」
「ただ、お菓子食べ放題とかはないからな?」
「ええー」
高望みが過ぎる。
「あ、あの、魔物と戦ってみたいです」
「……強気だな?」
そんなことを言い出したのはティム。
「もちろん、先生が僕たちに見合うと判断した魔物で構いません。ですが、僕としてはそろそろ実戦をと……」
王女を守るという任があるティムとエウレア。
ティムは責任感が人一倍強いので早く強くならなければと焦りがあるのだろう。
相棒であるエウレアが強い分尚更か。
「それも候補の一つかな。確かに勉強になるだろうな、色んな意味で」
魔物は動物と違って殺したところで得られるものはほぼない。
どういう理屈か知らないが、死体が消えるのだ。
肉も取れなければ皮や骨も当然取れない。
だが、他の動物や人を襲う習性があるので討伐はしておくに越したことは無い。
ただ、命を奪うのには変わりない。
10歳で学ぶことだろうか。
「……学園長に確認だな」
学園長が過労死しないだろうか。
[あとがき]
呪術廻戦の映画を見てきました。
映画は文句なしに面白かったです。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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