第2王女
「マロン、お前はー……」
「ごめんなさいー。出来る気がしてー」
救出するも、のんびりと謝るマロン。
こいつ、恐怖心というものがないのか?
しっかし重い!
シャロンの2倍くらいあるんじゃないか?
「そろそろ授業も終わりだから言っておくぞ。これからはアンネ先生が来ている時だけ飛行の練習をしようと思う。見てもらった通り、唐突に発動して危ないからな。念には念を入れよう」
「「はーい」」
ちょっと不満げではあるが、みんな納得してくれた。
マロンは飄々としているが、シャロンは怯え切ってるもんな。
普通、後者の反応の方が正しいが。
マロンは大物になるかもわからんな。
「先生には、クラブの顧問を受け持ってもらおうかと思います」
「これ以上自分に負担を強いるおつもりですか?」
それから1週間後。
ライヤは学園長室に呼び出されていた。
「今まであなたが受け持っていなかったのも配慮してのことなんですけどねぇ?」
「ならそのまま1年くらいはやってくれてもいいんじゃないですかね」
嫌がるライヤを周囲の教師陣の反対すら押しきってS
その学園長がクラブ活動の話を持ってくるなんて碌な事であるはずがない。
ちなみに、ここで言うクラブ活動とは学校における部活動のようなものだ。
その種類はスポーツ系から文化系まで多岐にわたり、唯一学年間での関わりがある場であろう。
余談ではあるが、学生時代ライヤとアンはクラブに所属していない。
「自分は学生時代にクラブに入ってないんですが」
「些細な問題ね」
「B
「あなたならやれると思ったのよ。それに、この頃あなたの実力に疑問を唱える人は減っているでしょう?」
きっかけはゲイルとの決闘であろう。
ライヤが見せた魔法をドラゴン型にする魔力制御は教師陣にもライヤの実力を知らしめるいい機会になったのだ。
どうやら断ることは出来なそうだと悟ったライヤはせめて、と交渉に出る。
「……給料は上がりますよね?」
「もちろんよ、ボランティアじゃないもの。先生の貴重な時間を奪っておいて給料を出さないなんてことはないわ」
日本で先生になっていたら部活動の顧問はボランティアでやらなければならなかった。
自分が元々やっていた競技とかならともかく、全く知らないものの顧問にされていたら気苦労が絶えなかっただろう。
「それで、自分が担当する予定なのはどのクラブですか?」
「よくぞ聞いてくれました!」
ニッコリ笑って年齢不詳の学園長は言う。
「あなたが今から行くのは、魔術クラブです!」
魔術クラブ。
魔方陣を描いて悪魔を召喚する、なんてものではもちろんない。
魔法と、体術を求める結果魔術という呼称になっただけなのだ。
ちなみに、日本で言う魔術のようなものはこの世界には存在しない。
だからごちゃついたりすることはないのだが、俺にとっては紛らわしいことこの上ない。
魔女がごちゃごちゃやってるイメージが魔術って言葉についてるからな。
この世界では言葉の意味に体術が含まれるように、基本的には対人戦を見据えた戦い方を練習する場となっている。
ちなみにこの国はそれほど治安が悪いというわけではない。
放課後に家に帰って家業を手伝わなければならない庶民と違い、クラブ活動をしているのは基本的に貴族か、余裕のある商家の子かだ。
要するに、治安が悪い地域になんて行きようがないので気にする必要はないはずなのだが、なぜか人気のあるクラブの一つである。
ガラガラ。
「こんにちはー」
魔術クラブが根城にしている武道場のような場所に、今日は見学という形で見に行くこととなった。
クラブの方針も知らずにいきなり部外者が顧問というのはおかしいだろうと学園長に言ったら、なら見学して来いと言われたのだ。
「あ! お前は!」
「危ねぇ!」
俺を見たある女子生徒からナイフが投擲され、一瞬前まで俺の頭があった位置に突き刺さる。
殺す気か!
「避けるな!」
「避けないわけがないだろ!」
少女の名はイリーナ・シャラル。
アンの妹でウィルの姉。
学園の5年生である。
「ここに何しに来たんだ!」
「何って、見学だよ。俺もここの教師だからな」
元々顧問として在籍している5年生担当の先生にも挨拶する。
「先生! こんな奴に敬語なんて使わなくていいですよ!」
「そんなことを言われても、先生同士ですからねぇ……」
魔術クラブの顧問はその実力とは裏腹に温厚な人物として有名だ。
俺にも分け隔てなく接してくれる。
「お前まさか! 魔術クラブの顧問になろうって言うんじゃないだろうね!?」
「いや、出来れば俺も御免こうむりたいと思ってたとこなんだ。イリーナから学園長に言ってくれないか? 先生だけで顧問は十分だと」
苦笑する顧問の先生。
「私の名前を気安く呼ぶな!」
「なら、なんて呼ぶんだよ……。アンの妹、とでも言うか?」
ウィルも含まれるがな。
「姉さまの名前を呼び捨てにするなぁー!」
とうっとライダーキックしてくるのをスッと避けると勢いあまって廊下にまで転がり出ていった。
「すみませんね、ライヤ先生。普段はあんな子ではないのですが……」
「怪しいところですね。俺がいるとずっとあんなもんですけど」
アンに王城に引っ張っていかれ、その時に会ってからというもの俺を敵視しているのだ。
曰く、俺がアンを騙しているとか何とか。
それはつまり、王や王妃も俺に騙されているという事に他ならないのだが、そんなことは気にしていない。
とにかくお姉さん大好きっこなのだ。
本人はと言えば王家の真っ白な髪をボブで切りそろえ、3人姉妹の中で唯一体術の方が得意である。
快活な性格から皆に分け隔てなく接するため、アンよりも学内では人気があるかもしれない。
俺以外に限るが。
コンプレックスは胸が一向に成長しないことである。
「今何か失礼なこと考えなかったか」
「いーや何も?」
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