第八話:指環

 それは、突然の出来事で、私は何が起こっているのか理解が出来なかった。


「シグー!シグー!」


 大きな声で彼の名前を呼んでみるが、返事はない。……防音室なのかな、ここ。とにかく、一刻も早くここから脱出しなくては。暗闇の中、じっと目を凝らしながら注意深く部屋の中を観察してみる。しばらくすると暗闇に目が慣れてきてうっすらと色々な物が見えてきた。私は近くにあったランプの灯りを付けてみる。幸い、灯りはついて部屋の中を照らし出す。

 その部屋は書斎のような部屋で机の上から部屋の隅に至るまで、沢山の紙が散らかっていた。私は床の紙を踏まないように注意しながら、部屋の奥にある小さな勉強机へと近づいていく。机の上に山積みになっている原稿用紙をそっとかき分けてみると、机に一枚のカードが貼ってあった。


 *三番目の引き出しの一番奥にあるよ*


 と走り書きしてある、マサの字だ。説明通り、私は三番目の引き出しを開け、奥の方に入っていた箱を取り出した。円柱型をした奇妙な箱だ。側面の装飾はとても美しい。上面部分には、台座が付いていて、真ん中には小さな穴が空いている。それを挟んで対になっている2匹の龍の彫刻も美しく、台座部分にはよく見ると、時計の針のようなものがついていた。どうやって開けるんだろう……?一人考えながら手掛かりを探す。すると机の上に何やら設計図のような物を見つけた。


 私は咄嗟にその紙を取るとじっと見つめる。円柱型の箱のデザインの上部には丸い何かが挟まっている。


「あっ――!!」


 ポケットに入っていたガラス玉を取り出し、小さな穴にはめてみる。カチッと音がしたかと思うと、針がクルクルと回りだし、二週程したところで台座が下に沈んでいき、上がってきたかと思うと、ガラス玉の代わりに、小さな指輪が台座にはめられていた。私はそれを丁寧に取り外し、指につけた。決して、豪華なものではないけれど、なんだかとても美しいものに見えた。


「あ……、シグを探さないと!」


 私は箱を机の上にそっと置き、この部屋に入ってきた辺りの壁を手探り次第に、触ってみる。んーっ!!と壁を力いっぱい押してみると、思った通り壁が回った。


『やっぱり、隠し扉だったんだ……。』


 そして私は前のめりに倒れる寸前にシグに受け止めてもらったのだった。


「アオ!ずっと探してたんだ!怪我はない?」


「大丈夫、シグ、ありがとう」


 私はシグの助けを借りながら立ち上がり、先程までの状況を説明した。シグは驚きながらも信じてくれて、二人で宝箱が置いてあるテーブルへと向かった。鍵はおそらくこの指輪……。

 私は、宝箱の透明な部分に指輪をはめた手を重ねて置く。すると、指輪から虹色の光が漏れだし天井を色付けていく。天井の左から右へとに架け橋を描いたかと思うと、その光は夢であったかのように消えてしまった。気づけば、宝箱は開いていて、中には黒っぽい何かが入っていた。シグも後ろから興味津々な顔つきで箱の中身を覗き込んでいる。


「やっぱりマサは絡繰からくりが大好きなんだねぇ」


 なんて言いながら。黒っぽいものを箱から取り出して、天井の灯りにかざしてみると、それがUSBメモリであることが分かった。


「アオ、これってもしかして、マサからの

 メッセージ……、かもしれないね」


「そうだね…。今すぐ確認したいところだけど、今日はもう遅いし、明日カラ兄の喫茶店で見ることにしない?」


 私達はその後、小さな小屋を後にし、来た道を折り返してそれぞれの家へ帰った。寝る時間になっても、私の胸の高鳴りは収まることがなかった。指輪をそっと、包み込んで胸にあてる。まるで、彼が近くにいるような感覚に陥り、なんだか落ち着いてきた。すると、ウトウトと眠気が襲ってきて、気づいた時にはもう、次の日の朝だった__。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る