第2章 中学受験
「お前みたいなブスは学校に来るな」
「うわー藤永菌がうつる。みんな逃げろー」
「お前調子に乗るなよ!」
振り上げられる拳。思いっきり目を瞑ったと思ったと同時に目が覚めた。夢だった。
私は小学二年生の時から壮絶ないじめにあっていた。暴力、暴言を浴びせられる日々。苦しみに苦しんだ結果、不登校になってしまった。不登校になったのは小学校四年生の六月。顔に大きな痣を作って帰ってきた日に親が慌てて学校に行くなと言った。それまでは必死に隠していたが、実は親は知っていて何度も学校に問い合わせていたが、学校はそんな事実はないの一点張りだったという。
それから半年間は習っていたピアノの練習をした。ピアノを弾いていると不思議といじめを思い出さなくて済むからだった。
そんなある日だった。両親が旅行へ行こうと言い出した。そして2泊3日で箱根に行った。ゆっくりと落ち着いた旅だった。そして2日目の夜、両親と将来のことを色々と話し合った。
「渚、中学受験してみない?」
「え、なんで?」
「だって近くの中学に行っても、知ってる友達ばっかりでまたいじめられるだけだろう?無理して大学まで行けなんて言わないけど、せめて高校は出ておいた方がいい。中学に行けなくて勉強できずに高校進学できないのは、まずいからさ。渚、頑張ってみない?」
「うん、わかった」
こうして小学校四年生の二月。中学受験で言うところの新五年生から私は中学受験専門塾に通い始めた。家から近い塾だと、同級生が通っている可能性が高かかったため、電車に乗って八駅先の塾まで通った。
元々勉強ができる方ではなかったし、半年間学校に通っていなかったので、塾のハイレベルな授業に最初はついていけなかった。ただ、高校教師をやっている父親の協力もあってなんとか、五年生に進級するまでに同年代のきちんと学校に行っている子たちと同じぐらいの学力はつけることが出来た。それからは必死に勉強して、入塾当初は25だった偏差値を52まであげて、今通う明葉学園中学高等学校選抜クラスに合格した。
しかし、無事に中学に合格した私は安心からか全く勉強せず、最初の中間考査でクラス最下位。また文化祭で行われたミスコンテストで中学一年生で初めて3位をとったことで有名になり、下のクラスの子たちに遊びに誘われるようになった。それから更に勉強のやる気がなくなっていった私は見るうちに成績が落ち、最終的には今のクラスにいる。
高い塾代と学費を払ってくれている両親には本当に申し訳なかった。ただ、今のクラスの人たちは友達を本当に大切にしていて、こんな私ですら、毎日カラオケに誘ってくれる。今まで友達がいなかった私にはそれが嬉しくて毎日遊びに明け暮れていた。
毎日が楽しかった。でもずっと不安だった。私は本当にこのままでいいのだろうかと。でも目標がなければ頑張ることは難しい。目の前の楽しいことに目をくらましていた。
何のために生きてるのだろう?私は必要のない人間なのではないか。中学受験した挙句 成績不振で両親に迷惑をかける一方。きっと学力は今の中学一年生以下。このまま大人になったらろくな人間になれない。でも、そうやって頭の中では分かってはいても私は変わることができなかった。いや、ひょっとしたら変わり方を知らなかったのかもしれない。今まで自分の意思を持たず、両親がひいたレールを走っていただけの私には、どうしたらこの状況から抜け出せるか、その術を知らなかった。小学生の時には経験できなかった楽しい日々の方がずっとずっと私にとっては大切だった。
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