あおいうみ

@natsukimizutamarikj

第1章 幸せとは

 幸せとはなんですか・・・?


 私の人生このままで終わってしまうのだろうか?


 何も変わらない自分。変わろうともしない自分。そんな自分が私は大嫌いだった。



 藤永 ふじなが なぎさ。なんとなく学校に行き、家に帰ってYouTubeを観るか、友達とカラオケで夜まで遊ぶかっていう生活をかれこれ三年以上続けている私立中高一貫校の高校一年生。成績に関しては、なんとか留年だけは免れているといった所謂落ちこぼれ。


 こんな生活を続けていたら当然夢も希望もない。私はこのままで大丈夫なのだろうか?という不安がないわけではないけど、でもどうすることもできないまま結局高校一年生の春を迎えてしまった。


 私が通う明葉学園中学高等学校は習熟度4クラス別の学校で、1番上は難関私立、国公立大学に進学コースで実際それなりの実績を残している。一方私の通う就職、専門学校進学コースはその名の通り、地元の専門学校に進むか就職するかのどちらか。まだ高校一年生なので今後の成績次第では、上のクラスに上がり大学進学が可能になるケースはあるが、毎年一人上がるか上がらないかの滅多にないことである。つまり、ここのクラスに振り分けられれば、大学進学の見込みはほぼないと思ってもらって構わない。

 実は私は、中学に入学した時には選抜クラスと呼ばれる、高校では難関私立、国公立大学進学コースにあたるクラスに所属していた。しかし、わけあって中学から勉強をやめてしまった私は、定期考査でクラス最下位を取り続けてしまった。そして中学二年生に進級した時には、一つ下のクラスに落とされ、完全にやる気をなくし、さらに著しく成績は落ちていった。そして今に至る。


 私の所属する就職、専門学校進学コースは2年1組。他の学年も1組がこのコースにあたるため、校内では「1BK(ワンビーケー)」と呼ばれている。1は1組の1、Bはバカのば、Kはバカのかである。つまり偏見たっぷりの差別用語である。驚きなのは、この名称をつけたのはこの学校の教師であるということである。努力ができない人間だと一蹴し、授業のレベルも異常に低い。部活で自己紹介の時に「1組です」と言うと「1BKか。部活なんてやってないで勉強した方がいいんじゃないか?」って言われる。まあ、多くの生徒が留年危機にあると言っても過言じゃないので無理もないのかもしれない。


「なぎさぁー、カラオケ行こー」

 この台詞が、1組で毎日飛び交う馴染みの台詞である。


「ああ!ごめん!今日私、部活!」


「あーそうなんだ。わかった!じゃあまた明日ね!」


 このクラスの女子で部活に入部しているのは、私しかいない。みんな放課後は遊ぶかバイト。ただ私もいくら部活に入部してるとはいえ園芸部である。ハードな部活ではない故、やはり勉強が忙しい難関私立、国公立大学コースの子が多く、部活中に飛び交うハイレベルな会話を聞くのは苦痛だが、園芸が好きだから自ら入部した部活である。そんなことは言っていられない。


「あ!大崎先生!!今日はこれで良さそうですか?」


 部活中、生真面目そうな生徒が先生に声をかけていた。大崎智哉先生。一年七組の難関私立、国公立大学コースの担任教師である。園芸部顧問で、掛け持ちでコンピューター部の顧問でもある。ちなみに私の中学一年生の時の担任の先生で、中学一年の時からこの部活に入部しているので、大崎先生とはそれなりに親しい。


「うん、いいよ!お疲れ様!!みんな家に帰っていいよ!勉強頑張ってな!」


 そう言われて一目散に去っていく部活動生。私はまだやりたいことがあったので残っていると


「おお!藤永!最近どう?」


「クラスもう一つ下に落ちちゃいました。まあ、全く勉強してないので当然なんですけどね」


「そっかー。なんかあったら俺に相談しろよ?」


「すいません心配かけてしまって」


「気にすんな。大丈夫だ」


 この学校の先生たちは、1BKに対する偏見が強い。そんな中で、唯一私とこうやって近くで接してくれる先生は大崎先生だけだった。ひょっとしたら園芸部をやめずに続けているのはこの先生がいるからなのかもしれないなと最近は思っている。


 結局いつまで経っても、適当に生きている人間なんだ。私は。


 そう思って、見上げた空はなんだか妙に綺麗な気がした。

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