第11話懐かしき再会

銀行強盗事件も解決して日常が戻った。毎日追いかけられていたマスコミも芸能人が薬物で検挙されたニュースで皆一同にいなくなった。近頃日本でも芸能人の薬物使用が度々報道され話題になっていた所に大物俳優が検挙された事でTVはそのニュースで持ちきりとなった。

蓮も普通の高校生活を送れるようになり(ある一部の女生徒は相変わらず遠巻きに眺めに来てはいるが)クラスメート達と楽しく過ごしていた。

ある日の放課後いつものように友達と新宿で遊んでいると蓮のスマホが鳴った。蓮はアランだと思い画面も見ずに「何?」とでると『蓮?私だが元気か?』とアラビア語で返された。電話の相手はアル・ワリード 蓮が助けたもう一人の男でアラブの富豪だった。今は蓮の保護者の一人だ。

『ちょっと待って』と言って友達に先に帰る事を告げ別れてから改めて話始めた。

『アル待たせたね。友達と一緒だったからはなしづらかったんだ!それでどうしたの?』蓮もアラビア語で話している。

『友達と一緒だったのにすまない。実は来月皇太子のお供で日本に行く事になってね、それで1日あけれるから一緒に食事でもどうかと思って。』

『ああ、それは大丈夫だよ。何日に来るの?』

『来月の14日に其方に着くんだが皇太子のお供だから17日の夜あけれるよ。』

蓮は自分の予定を考えてからわかったと返事をした。


それから1ヶ月後アラブの皇太子が日本にやってきた。公式訪問とあって空港だけではなく都内各所で厳戒態勢で警護にあたっていた。TVでもアラブの皇太子が来日したとあって到着時の映像やまだ独身の皇太子のことなど扱った番組が多くなった。

蓮がTVを見ていると丁度皇太子の到着時の映像が流れた。

「アル、元気そうだな。」

アランが作ってくれる夕食を待ちながらテレビに映し出されたアル・ワリードの姿に懐かしさがこみ上げた。ワリードのもとを去りアランと共に日本に来てからすでに3年近くになっていた。

「あの人はいつでも元気ですよ。」夕食の準備支度をしているアランが返す。

蓮とアランはシリアから脱出した後ワリードと共にアラブに行き2年近く一緒にいたのだ。シリアから脱出した後日本に帰るまで3年あったがその内の1年は蓮が大学に行っていた。実は蓮は通常は4年かかる大学を僅か1年で卒業している。今は日本で高校生をしているが高校の勉強は既にマスターしていた。

今は純粋に高校生活を楽しんでいるのだ。


17日の夕方アランの車でアルとの待ち合わせのホテルへと向かった。地下駐車場に車を停めたふたりはロビーにあるラウンジまで向かった。あちらこちらに私服の警官が多数警備にあたっていた。皇太子の随行で来たアル・ワリードにも警護がついているのだろう。エレベーターから降りたところで声をかけられた。

「あれ?蓮くん。サフィールさんもこんなところで会うなんてお久しぶりです。」

新宿署の野中刑事だ。

「野中さん、今日はどうしたんですか?何か事件ですか?」

刑事というだけで事件を想像してしまう。

「いやぁ今日は応援ですよ。外国からの要人の警護に駆り出されてるんです。人手不足で我々におはちが回って来たってとこです。」

「ご苦労様です。」

そんな感じで世間話をしているとアランが蓮に断って先に行ったので蓮も野中に挨拶をして別れる寸前にアランから呼び声がかかった。

蓮がアランの元へ行こうとした時

「ちょっと蓮くん!待って君ワリード氏の知り合い?」

アル・ワリードの隣で蓮を呼んでいるアランと蓮を見て驚いていた。

「あ、もしかしてアルの警護ですか?彼、俺の保護者なんですよ一応。アラブで助けてくれて俺を日本に帰してくれたの彼なんです。」

野中はそう言う蓮の顔を見ながら蓮の生い立ちを思い出しちょっと気まずそうにこめかみをかいていた。野中と離れアル・ワリードのもとへ行く蓮を見ながら蓮の事情を考えていると大山から声がかかった。

「おい野中、あれ朔田 蓮君か?」近くにいた岩山が同じく蓮を見ながら野中に確認する。

「そう、みたいです。なんか蓮くんの保護者だって言ってました。」この後、警護にあたっていた他の者から蓮について聞かれたのは言うまでもなかった。


『アル・久しぶり。』

そう言って蓮はアル・ワリードと握手した。アル・ワリードは蓮の頬にキスをして返した。それからホテルにあるレストランへと移動して席に着いた。

『改めて元気そうで良かった。TVで元気そうな姿を見て嬉しかったよ。』

3人は食事をしながら近況を話し、アル・ワリードは先日の銀行強盗事件の事を聞いて驚いていた。

『蓮の事だから大丈夫だったとは思うけどアランをあんまり心配させるものじゃないよ。』

蓮の本当の姿を知っているのはこの二人だけだった。高校生としての仮の姿からは想像も出来ないぐらい凄まじい戦闘能力を持っている事を知っているのだ。ワリードは話のついでにと言って、ある宗教の過激派組織が日本を標的にしている事と、すでに日本国内に潜伏している事を告げた。

今回殿下の公式訪問でのテロが計画されていた場合

訪問は取りやめになるかもしれなかったが有力な情報によるとアメリカと同盟を結んでいる日本に対してのテロだとわかった為来ることになったのだ。日本政府にはこの情報は既に伝えてあるので何かしら動きがあるかもしれないと話した。

その後は思い出話やら蓮のこれからのことなどを話し明日のワリードの予定を聞くと早朝から会議があるというので名残を惜しみながらも今度は蓮達がアラブに行くと約束して別れた。

それから数日後、アラブの皇太子一行は帰っていった。




























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