第9話ヒーロー

テレビのワイドショーで流れる平和なニュースを聞きながら自分の今までの事を考えているとアランが帰ってきた。

車のキーをテーブルの上に置きながら警察から電話があった事を報告し明日学校が終わった後に行く事になったと話した。

「やっぱり普通の高校生だったら隣で人が死んだら相当ショックを受けるもんだよな。絶対それを言われそうだからさ、なんか考えておくべきかな?」

「貴方の場合そもそも普通の高校生じゃないから、

気が動転してあんまり覚えてません。って答えとけば良いと思いますよ。」アランはキッチンに立って食事の支度をする準備をしながら答えた。

蓮の食事や身の回りのこと全てをアランがやっている。

蓮は自分の事は自分で全てできるのだけどアランがさせてくれないのだ。あの日アジトから助け出してからアランは蓮を自分の神のように崇めているのだ。蓮は蓮でそれを受け止めているのだった。


翌朝マンションを出ようとしたが相変わらずマスコミが張り付いていたのでアランの車で学校まで送ってもらった。校門の前にもマスコミがいたが校門を抜けて生徒玄関前で車を降りた。

生徒玄関に入ると同じクラスの男子数人が集まってきて事件の事を聞いてきた。取り敢えず朝の挨拶を交わして教室に入った。

「お前すごかったな、あんな目にあって大変だったな。犯人射殺されたんだろ?お前見たの?」

「テレビで見たんだけど、あれ本当?」

事件のことや蓮の生い立ちまでワイドショーで流れた事の真偽を確かめようと皆が聞いてきた。

「テレビでやってたのは本当だよ!でも俺15歳位までの記憶がないからさあんまり良くわかんないんだよね。それに事件の時は気が動転しててなんかわかんないうちに終わったからあんまり覚えてないしさ。」そう言ってみんなを納得させた。中にはまだ色々聞きたい事がある者もいたが先生が入ってきて会話は中断された。

生徒の一人が号令をかけ朝の挨拶から始まった。

「昨日の事件の事はみんなも知っていると思うが

皆動揺する事無くしっかりと授業に集中するように。後、朔田の件は極めてプライベートな事なので詮索する事がない事を信じている。以上、授業を始める。」

先生から皆一同に注意を受けた。それでも休み時間になると他のクラスからも覗きにきたり今まで話した事もない者までが蓮の机までやってきてはテレビのワイドショーで流れた事の真偽を確かめに来た。

普段から蓮と親しくしている友人数名が蓮の味方をして周りから庇ってくれた。

「みんなサンキューな!俺小さい頃の記憶がないからさ、聞かれてもなんも答えられないけどね。」そう答えた。仲の良い友人達は半ば同情するように蓮を守った。それからは特に問題もなく全ての授業が終わった。友人からカラオケ行きの誘いを受けたが、警察へ行かなければならないからと断った。

アランが朝と同様に迎えに来ていたので校門の中から車に乗り警察へ向かった。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る