第4話謎の高校生
「君、名前は?」病院で手当てを受けていた高校生に野中が声をかけた。
「人質になって大変な目にあったね。怪我は大丈夫?御両親に連絡したいから連絡先教えてくれる?」そう言ってメモを取り出した。
「あ、朔田 蓮です。両親はいないので今保護者に迎えに来てくれるように頼みました。」
「え?」メモに名前を書き込みながら聞いていた野中は「御両親がいないというのは?」と聞き返した。
「両親は俺が幼い頃亡くなりました。だから今は知り合いの弁護士が俺の保護者なんです。」まずい事を聞いたみたいな感じになった時、病院の廊下を一人の外国人が歩いてきた。
「彼、俺の保護者で弁護士のアラン・サフィールです。」こちらに金髪碧眼の外国人が近づいて来るので野中は動揺した。野中が英語で話すべきか逡巡している間にこちらに来た外国人は英語ではない言葉で朔田 蓮に話しかけ二人は何かを話していた。そして野中の方に向き直って自分から流暢な日本語で挨拶してきた。
「朔田 蓮の弁護士兼保護者のアラン・サフィールです。彼への聴取は私も同席させて頂きますのでよろしくお願いします。」
あまりにも流暢な日本語なので野中はビックリしたのと同時にホッとした。
「今日はこのまま帰宅していただいて構いませんが、住所と電話番号は教えていただきます。こちらに書いていただけるとありがたいです。後日詳しいお話を伺いたいのでまた連絡します。」
連絡先を聞いてから保護者と共に朔田 蓮は帰っていった。
事件の翌朝、菱丸銀行で起きた強盗立てこもり事件について新聞、報道各社が一斉に報じた。画面に映し出された映像の人質となった蓮の顔と大山が崩れ落ちた瞬間にはモザイクが掛けられたが、一般の野次馬が撮った映像はそのままSNSに流されて瞬く間に拡散されたのだ。SNS上で(この高校生は誰?)(なにあれメチャクチャカッコイイ‼︎)(イケメン)(どこの高校?)など世間の注目は事件そのものよりも人質になった蓮に集まったのだ。それを受けて報道各社も犯人の大山についても色々な角度から報道したものの、この高校生が誰なのかや、どこの高校でどんな子なのかなど報道合戦が始まった。
報道各社が朔田 蓮について調べていくうちに彼についての驚くべき情報が飛び込んできて益々報道は過熱していった。
朔田 蓮の両親は考古学者で世界中の遺跡の研究をしていた。蓮が幼い頃シリアにある遺跡の発掘の為家族全員でシリアに行き家族共にテロリストに誘拐され、両親も妹も共にテロリストに殺されたのだ。
蓮もテロリストに殺されたと思われていた。でも彼は日本にいてあまつさえ銀行強盗犯と共に映像に映し出されたのだ。報道各社はこの謎を解明しようと躍起になった。朔田 蓮がいつ見つかって日本に戻ってきたのかは以前不明のまま、実は彼だけはずっと日本にいたとか、直ぐに見つけられ帰国していたなど憶測だけが飛び交っていた。
誘拐された時蓮は5歳だった。それから10年間どこで何をしていたか彼は何も話さなかった。
ただ大使館に来た半年前にアラブの富豪の家にいたことだけは話し、それ以前の記憶が無いのだと言った。大使館員がアラブの富豪の家に蓮の事を聞きに行ったが半年前に砂漠で倒れていた蓮を助けたが蓮にそれ以前の記憶が無く自分が日本人だと思うと話した為大使館に行くように取り計らった。と話したのだった。
大使館で身元を確認してから朔田 蓮は日本に帰って来たのだった。3年前このニュースは伏せられていた為報道される事は無かったが今回はこのショッキングなニュースは今回の人質となった事と併せて大々的に報道されたのだ。
テレビでこの報道を見ながら野中は大山が崩れ落ちた時のことを考えていた。今思い返すと、大山が崩れ落ちる寸前に蓮は何かに頷いたように見えたのだ。蓮が頷いた瞬間大山が崩れ落ちた。これは偶然だろうか?本庁に確認したがあの時スワットが発砲した記録はないとの事だったが、マスコミには人質の命に関わる事態だった為スワットによって射殺された。と発表したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます