手記 真紅の残したもの

こんな事をわざわざ書く必要はないのだけれど、私の生きた証として残しておきます。

私には生まれつき不思議な力がありました。

物事の先が見えるのです。

詳細まではっきりとしたものではないのだけれど。

近い事から先のことまで。

私の意思とは関係なく見えていたのです。

私にはそれは当たり前だと思ってました。

だけどそれは違いました。

私と他の人は違う。

その力があるのは私だけだと、私だけが特別なのだと。

物心つくころには理解できました。

血を分けた双子の弟である暁にはその力はなかった。

他と違う事は罪なのだと、それは幼い私にも理解できることでした。

私は皆と同じであろうとしました。


だけど…。

大人達は私を気味悪がっていたわ。

私がどうにも察しがいいものだから、たぶんそのせいね。

私が生贄に選ばれたのは、そんな気味の悪い子供だったからかもしれないわね。


奴らは儀式の名を借りて、都合の悪い人間を殺すのよ。

大人たちはすべてを知っていたのよ。

耳を目を口を塞ぎ、関わることを避けていた。

子供達には何も知らされなかった。

都合の悪い事はすべてあしびき様のせいにして、それを信じ込まされていた。


だけど…。

これは呪いだというの。

私を蝕むこの病。

肉を腐らせ、骨をついばみ、私の体は溶けていく。

あしびき様の祟りだとでも言うのでしょうか。


そう、私は死ぬわ。

先が見えるだなんて。

私が特別なんだと高をくくっておきながら。

私は自身の先は全く見えていなかった。

だけど最後だけは…美しくありたい。

暁にはこんな私を見られたくない。


この記録を見つけたあなた。

どうか…この事は暁には教えないでください。

これが私の最後のお願い。

私は存在しなかったのです。

私を忘れてください…。


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