4
「はぁい。津村さん、このゾンビ養殖を始めようと思ったきっかけを教えてください」
「あのぅ、ここら辺は野良のゾンビが多かとですよ。ほいで、7年前やったですかねぇ、誰にも関心ば持たれんでウーウー威嚇しながら歩き回っとるゾンビば見て、不憫に思うてですねぇ、ほいで『どがんかならんとやろかー』っち思うとったとですよ。ほしたらビックリすることのあってですね。ある日のことですよ、野良のゾンビのツガイば見つけたとです」
「ツガイですか⁉」
「ええツガイですぅ」
「ツガイって直ぐに分かるものなんですか!? というか、ゾンビにツガイがあるんですね」
「いや、俺もビックリしたとですよ。野良のゾンビば観察しとったら、何かカップルのごとして歩いとる男女のゾンビがおってですねぇ。そん時は『たまたまたい』っち思うて気にしとらんやったとですぅ。ほしたら翌日も翌々日もカップルでウーウー威嚇して散歩しとるとですもん『あー、こりゃできとるねぇ』っちピーンときたとですよ。ほいで『まずはこん二人ば捕まえてどがんかすっ』っち思うたとですぅ」
「へぇ、そうなんですねぇ。それで、どのようにしてそのツガイを捕まえたんですか?」
「簡単簡単。スタンガンでバチバチっちしたら一発よ。すぐ気絶しますぅ」
「え?ゾンビにスタンガンって効くんですか?」
「効く効くぅ」
「いや何かイメージでは気絶とかしないし、スタンガンとか意味が無いっていうか、頭を飛ばさないと動き続けるイメージなんですが……」
「ウソウソ、そいは映画で儲けるためのデマたい。実際ゾンビの頭ば飛ばしたことはなかですか?」
「ないです」
「いっぺん飛ばしてみて下さいよ、頭飛ばしても動きますけん。見たことなかですか?頭が無いゾンビ」
「いやぁ、そもそもゾンビが出るところに基本近づかないものでぇ」
「頭飛ばしたら動かんごとなるっちいうとはデマですよ。よっぽどスタンガンが良かですねぇ」
「そうなんですねぇ、勉強になります。それで、捕まえてどうされたんですか?」
「これが大変でねぇ、引き離そうとしたら大暴れ。もう暴れる暴れる。いっそスタンガンで眠らせてから引っぺがしてやろうかっち思うたりもしたとですけどねぇ、やっぱ愛し合う男女の仲ば引き裂くとは心の痛むとですよ」
「なるほど、とても優しいですね」
「ほいで仕方んなかとで、こんツガイば追っかけ回しとったゾンビがおったとですけどね、そればバチバチっちして捕まえて代わりにしたとですぅ」
「追っかけ回してたというのはどういうことですか?」
「いつでんツガイの後ろから物陰に隠れてジーっち見とっとですよ。あれやろねぇ、ストーカーでしょうねぇ」
「ゾンビにもストーカーがいるんですね。ツガイがいるというだけでも驚いたんですが、それよりも驚きです」
「いや、俺も学が無かとで分からんとですよ、分からんとですけど、ストーカーにしか見えんとですもん。他んゾンビと比べても陰湿ですもん。あいつば見る度に死んどって良かったねぇっち思うとったとですよ。生きとったらもう捕まっとっでしょうねぇ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます