第3話 碧空春の赤い糸の最果ては
Q.質問です。あなたにとって、『青春』とは一体なんですか?
そう聞かれたら、私こと
憧れているもの。だと。
私は欲したんだ――青春を。
地味で死人のように生きる人生ではなく。生き生きした日々を私は望み、行動し、失敗して――そして彼と出会った。
私が初めて恋した、あの人に――。
◇◇◇
私は昔から個性と呼べるものがなかった。
逆にいえば、私の家族は個性の塊のような人たちばかりだった。
歳を重ねるごとに幼女化が進む、祖母。
縁結びが得意で業界では有名な占い師の、母親。
美形すぎて学校では『王子様』の異名で呼ばれていた、姉。
世界有数の科学者として知られる、父親。
皆が皆、一癖も二癖もある強い個性を持つ人たちばかりで――あの人たちに比べれば、自分はなんて無個性な人間なんだろう――小さい頃ながらによくそう思っていた。
そのことが私の自己肯定感を下げる原因となり、私は自然と地味で目立たない存在になっていった。
可愛い服を見ても――いや、私には似合わないし――と避けて。
何か出し物やイベントをやってても――私が参加したら、台無しになっちゃうだろうな……――と思い。
クラスで、私も混じりたい話題を話している人たちがいても――私が話しても面白くないよね――と諦めた。
目立たず、騒がず、周りに迷惑をかけないよう、静かに生きる。
それが、中学校時代までの私だった。
少し話は変わるけど、無個性な私にも趣味と呼べるものがあった。
私は漫画や乙女ゲームが好きだ。いわゆる、オタク系統の趣味。
一昔前ならば、これも個性の一つと呼べたかもしれないけど、昨今オタク需要の幅広く、たかが十五歳程度小娘である私ごときの知識では、個性と呼ぶこと自体おこがましかった。
誇れるほどの知識があるわけでもなく、見てきた作品を生かして何か創作活動をするわけでもない。
完成品をただ消費して楽しむだけ。私のオタクレベルは、その程度のものだ。
でもそれでよかった。だって作品を読むことは楽しかったし、何より満たされた気分になれたから。
特に少女漫画が大好きだ。
毎回毎回、色々な出来事が起きて、ドキドキして、ワクワクして、見ててとても楽しい。
少女漫画のヒロインはどんなに目立たない存在で、欠点を持った人間でも、ヒーローはそんなことお構いなしに手を差しのばしてくれる。世界を変えてくれる。本当の自分を愛してくれる。
心から結ばれているんだ。
そんな展開に、私は心底憧れた。
私もいつか、こんな青春を送りたい。何度そう思った。
あの時、一度だけ体験した、夢のような瞬間のように――。
だが中学二年生の冬、唐突にとある考えが頭に浮かんだ。
そのいつかとは――一体いつなのだろうか?
「――はっ!?」
衝撃のあまり、私は自分のベッドから飛び起きた。
待って待って。よく考えたら、今の地味で目立たない私に、そんな日なんて訪れるのか?
……いや確実にこない。今まで目立たないようにしてきたし、友達どころか、知り合いすらいない!
今の私は、漫画で言うとこの背景のモブキャラ……いや空気だ! 貼ってある61番影トーンの方がまだ存在感があるに!!
「このままじゃ私……駄目だ!?」
目立たなければ、誰かと関わらなければ、イベントなんて物語なんて始まるはずがない。
そんな当たり前のことに、私はこの時ようやく気がついた。
自分の頭の回転の悪さに恒例の自己嫌悪が押しよせて病んだりもしたけど、落ち込んでばかりもいられない。
頑張ってイメチェンをして、あの時経験した漫画みたいな青春生活を送るんだ!
この日から、私は高校受験そっちのけで、自己改造に励むことにしたのだった。
今まで避けていたお洒落を勉強するため、本屋でファッション雑誌を買い込んだり、ネットで情報を漁ったりして、昨今流行の服やメイクなどの知識を片っ端からマネしていった。
といっても、全て家の中だけだ。学校ではいつもの地味モードを貫き、背景のまま過ごした。
中学三年生は受験シーズン。
青春イベントの発生率は非常に少なく、何よりもみんな受験勉強どころでそれどころじゃない。
ここで変に悪目立ちしても、嘲笑の種になるのがオチだ。
何よりも下手に目立っていじめられそうで嫌だ……。女子からのイジメコワイ……。されたことないけど……。
狙うは、高校生デビュー!
今まで目立たず、知り合いすらいなかったことを逆に利用して、大逆転を図ってやる! そこに私の青春の全てをかける!
中学三年生は、学校と家を往復しつつメイクの特訓や、最近の女子らしさについての勉強を繰り返した。
受験勉強については、近くの平均的高校を選んだので特に問題なく合格できると思う。
これも今まで友達一人すらいなかったので、漫画を読むか勉強ばかりしていたことが功を奏した。
そして月日は過ぎ去り、私は中学校を無事卒業した。
受験した高校にも予想通り合格し、晴れて四月から念願の高校生活が始まることになったのである。
今日から、この日から私は変わるんだ――。
そう誓い、これまで私が勉強してきた全ての知識をここに集約させた。
自分でも一応確認したが、うん。なかなかに悪くない格好だとは思う。
大丈夫だ。大丈夫!
これまで頑張ってきたんだ! 絶対にいけるはずだ!
鏡の前で両拳を作り、自信をつけ、私は学校に向かった。
まさか、あんな事態になるなんて予想できるはずもなく……。
◇◇◇
入学式が終わり、割り振られたら教室に入り、ホームルームが始まった。
高校に来てからこっそりと周りの様子を見回してたが、今だ私がどのような評価を下されているのかは分からなかった。
皆が皆、私を見た途端に一斉に目を逸らすからだ。
それを見て、少々嫌な予感が頭をよぎったが、頭を振って不安をかき消す。
落ち着け私! あれはきっとみんな初対面で恥ずかしがってるだけなんだ。
私の顔が酷すぎて皆訳じゃない。きっとそうだ!
それに今日から私は変わるんだ。変えてみせるんだ!
絶対に憧れていた青春を謳歌する!
だから、最初の自己紹介だけは外すわけにはいかない!
一人ずつ、自己紹介をしながら立っては座り、立っては座りを繰り返し、遂に後ろから私の番までまわってきた。
気合いは十分。
私は立ち上がり、周りの生徒、先生がこちらに注目した。
みんなが私を見ている……!
緊張で手汗が滲み、唇が震えた。
そしていざ自分の名前を言おうとした――――ガタン! 大きな音が前方から聞こえた。
ガタン! ガタン! ガタン!
それも、一つや二つだけじゃなかった。
「せ、先生! 前方の席のみんなが倒れました! て先生も倒れてる!?」
「誰か! 保険室! 保険室に運べ!」
「え? え? え?」
私の前に座っていた生徒。そして先生までもが、全員、私を見た瞬間、何故か一斉に倒れてしまったのだ。
「え、えっと……」
何が起こったのか分からず、立ち尽くす私。
耳には同級生たちの声が、ただ聞こえてきた。
「くっ! やっぱり碧空さんの顔に(可愛すぎて)絶えきれなかったか……」
「みんな! 碧空さんを見ちゃだめよ! (綺麗すぎて)倒れるわよ!」
「ええぇ……っ!?」
倒れた生徒+先生はその後保険室に運ばれて、ホームルームは強制終了。
その後、臨時の先生がきて事なきをえたが、誰もが私から目を逸らしていた。
この日、私は学校から逃げるようにして、家に帰った。
◇◇◇
高校一年生になって一ヶ月が経過した。
この時、私がどうなっていたかと言えば。
「オワタ……もう死のう」
絶望し、死を決意する一歩手前だった。
私に気力が少しでもあったら、間違いなく首を吊ってたと思う。
ホームルームで起きた事件は瞬く間に学校に広がり、様々な噂が流れているらしい。
一体どんな噂が流れているのかとても気になったが、学校で孤立している私にそれを知る術はない。むしろ怖くて聞くことすらできない。
一月が経った今でも、私は友達どころか、知り合いすら出来ていなかったからだ。
どんな噂かは知らないけど、100%悪い噂に決まってる……。
――あの子、顔キモすぎて生徒全員卒倒したらしいよ?
――え、マジヤバぁー!
とか言われてるに違いない……!!
最初こそ、私に話しかけてこようとしてくれてる人もいた。
しかしみんな、私の顔を見ては倒れたり、顔を逸らして口数も少なくなり会話すらまともにできなかった。
そもそも、私自身コミュ障なため、喋ることが得意じゃない。
何を話せばいいのか分からず、『あう……あう……』と口にすることしかできず、その言葉を聞いて、また人が呻いて倒れた。
『は、反則すぎる(可愛さ)だろうが……』
『もう無理、(尊くて)死ぬ』
私は、声まで醜かったのか。
それらが原因で、私の心はすっかりと折れてしまった。
私の一年間の頑張りは全て無駄だった。皆からは、そう判断されたのだ。
「陰キャ女子なんてどう頑張ったってリア充になんかなれないのに……なーに期待してたんだろなぁ……私……。どうせ私なんてこのまま誰にも好かれず死んでいくんだ……何一つ良いことなく人生終わるんだ……そうなんだ」
今から昔のような地味容姿に戻そうかとも考えたが、それだと返って目立つだけだし、変えるに変えれない。
こんな酷い結果になるんだったら、変な博打を打つんじゃなかった。
私の高校生活はこのまま一生生き恥をさらしながら過ごさなくちゃいけないんだ……。
そう思うと、涙が止まらず、顔を枕の中に埋めた。
正直もう学校にも行きたくない。
もうお外ヤダ。人付き合いとか面倒臭い。
この当時の私はどうしようもないくらい腐っていた。
だがそんな私に、ある転機が訪れることになる。
「春。何があったのじゃ? そろそろ話しみてくれんかの?」
私のおばあちゃん。恋塚乙女がそう言ってきたのは、もそもそと夕食を食べていた時のことだった。
話す気はなかった。というよりも話したくなかった。
思い出すだけで憂鬱なのに、言葉にすれば益々落ち込んで、自己嫌悪が襲ってくるから。
「言葉にすれば軽くなることもあるのじゃぞ? 話せることだけでよいから、聞かせておくれよ。お主の悩み事を」
昔から、おばあちゃんは私が何か悩んでいればすぐにこうやって優しく聞いてきた。
まるで私の思っていることが分かるかのように。
「分かるに決まっておる。春は儂らの大切な孫娘じゃからのう」
「理由になってないよ……それ」
「そうかのう? 大切な人間のことを誰よりも分かるのは、人間が持つ能力の一つではないのかのう?」
おばあちゃんはくつくつくつと独特な声を上げて笑い、それを見てるとなんだか身構えていた身体も柔らかくなったように感じた。
気がつけば、硬く結んでいた口も緩くなり、学校での出来事。ここ半年間での出来事を話していた。
おばあちゃんはそれを正座しつつ聞き、私が全てを話し終えた後、静かにこう口にした。
「つまるところ、春は充実した学校生活を送りたいということかのう」
「まあ……そういうことになるかな……」
「なんじゃ。それなら早く儂に言えば解決したものを」
「え?」
「春。出掛けるから外に出る支度をして参れ」
祖母は立ち上がり、台所からラップを持ってきて食べていた夕食の皿に次々と蓋をし始めた。
「おばあちゃん、まだご飯の途中だよ?」
「食事よりも孫娘の悩み事を解決するのが先決じゃよ。そんな不味そうな顔で食っておっては何を食べても美味しくないからのう」
「一体何処に行くの?」
「決まっておるじゃろうが。恋塚神社じゃよ」
そう言って、おばあちゃんは子供のように無邪気に笑った。
◇◇◇
「若いときの悩みというのは主に、未来への不安か、人間の関係性と相場が決まっておる。春の場合は後者。それなら縁結びの家系である、わが家の十八番じゃろうてからに」
星空が浮かぶ夜空の下を、私とおばあちゃんは坂道を二人並んで徒歩で上っていく。
時折背後を振り向くと、後方には眩しい街灯りが宝石のように輝いていた。
恋塚神社前の石段を登り始めたところで、私はおばあちゃんに質問する。
「ここで一体何をするつもりなの?」
「決まっておろう春。今からお主が神社で恋人を願うのじゃよ」
「へぇ? はっ?」
「春は『青春』を望んでおるのじゃろ? ならば恋が一番じゃ! 愛はよいぞ? 人間、自分を愛してくれる人間一人さえいてくれれば、人生はどうにでもなるからのう。くつくつ」
自信満々に愛を語るおばあちゃんだけど、私からすればなんとも言えない気分だった。
「おばあちゃん。おばあちゃんが管理する神社にこんなこと言うのはとても心苦しいんだけどさ。神頼みなんかしても、現実の問題は何も変わらないよ?」
私も一応母方の血である、恋塚家の血は引いているけど、おばあちゃんやお母さんのように人の縁が見えるなんてオカルト力は持ち合わせてはいなかった。
霊感もなければ、超能力も持ち合わせていない。何処にでもいる普通の女子高校生だ。
だから、個人的には無神論者。神様云々的考えは、一般的な人と同じで、都合の良いときでしか信じていない。
それこそ神様に祈って恋人ができるなら、この世にマッチングサイトができたり、少子化問題に困ったりしない。
多少夢見がちな私といえど、そこまで頭がお花畑というわけでもない。現実はどこまでいっても現実だということに代わりはしないのだ。
「春、昔から言っておるじゃろ? 恋塚神社の赤い糸は特別なのじゃよ。他の神社に負けず、頑丈じゃからのう。ちょっとやそっとのことじゃ、ほどけたりせんわ! くつくつくつ!」
「いや、別に効果の強さを聞いたわけじゃないんだけど……」
「それに春は恋塚家の血を引いておるのじゃ。結ばれた赤い糸そのものを見ることも可能じゃろうよ」
「どうだろうね。それ」
おばあちゃんは親切心から言ってくれているんだろうけど、身内の言葉だろうがとても胡散臭く聞こえてしまう。
渋る私の背を、おばあちゃんは小さな両手で押し、賽銭箱の前まで無理矢理立たせた。
「一見は百聞にしかずじゃ。とにかくやってみるがよい。賽銭は儂が出してやろう。ほれ、奮発して一万円じゃぞ! 気合いを込めて願うのじゃ!」
「そのお金、後で自分で回収するよね?」
祖母が出した一万円札を私は仕方なく受け取り、真っ暗な賽銭箱の中に入れて鈴を鳴らした。
もうどうにでもなれだ。
神様だろうがなんだろうが、私のこの現状をどうにかしてくれるのなら、やってみろ。
私の運命を変えられるものなら、変えて見せろ。
内心悪態混じりに、私は手を合わせ、こう祈った。
「私を――本当の私を愛してくれる恋人ができますように」
そう願った――――が、特に何かが変わったわけじゃない。
……少し期待したけど、やっぱり迷信は迷信でしかない。現実にそんな漫画みたいなことあり得るわけないし。私のようなモブキャラに特別なことなんて起きるはずないんだ。
「くつくつくつ、自分の右小指をよく見るのじゃよ。春」
「へっ?」
おばあちゃんに諭されて、私は右手の小指を見た。
その小指には。
「う……そ……?」
先ほどまではなかったはずの、赤い指輪のようなものがはめ込まれていた。
赤い輪っかからはそのまま一本の糸が伸びており、どこか遠くまで続いている。
糸の先は、神社の外。鳥居の下に見える小さく輝かしい街灯りの中に伸びていた。
「どうやら春にも、自らの縁が見えたようじゃな。流石はわが孫娘じゃよ」
もしかしてこれが、おばあちゃんの言っていた人の縁。運命の赤い糸?
ならこの先に、私の運命の相手がいる……っ!
そう思った瞬間、足が動いていた。走り出していた。
早く会いたい! 私の運命の人に。私のヒーローに。今すぐ会いたい!
どんな人なの? どんな声で話すの? どんな仕草や行動をするの?
色んなことが気になって、知りたくて、あふれ出る興奮で、死人だった身体に一気に力が湧き出た。
しかし、走り出した私の身体が止まる。おばあちゃんが手を掴んできたからだ。
「そう慌てるでない。今日はもう遅い。婿殿は明日、探せばよかろう」
「で、でも……っ!」
「赤い糸で結ばれた者達は必ず巡り会える。惹かれあうんじゃよ。放っおいてもすぐ会えるから安心するのじゃよ」
「そ、そうなんだ……」
それなら、急ぎすぎる心配もないか。
おばあちゃんに諭されて、どうにか焦る気持ちを抑えたが、それでも落ち着かない。そわそわする……。身体に力が漲ってくる。
「元気を取り戻したようじゃのう。よかった、よかったわ。では、春。家に帰って夕食を食べるとしよう」
その日は結局、おばあちゃんの言うとおり家に戻って夕食を食べた。
帰ってから食べた晩ご飯は、何故だか久しぶりに美味しかったように感じた。
◇◇◇
翌日。
眠たい目を擦りながら、自転車を走らせて学校に向かう。
昨夜、赤い糸の先の人物がどんな人なのかを考え始め、ほとんど眠ることができなかったのだ。
うっかりすれば目を瞑ってしまいそうになるけど、その都度目を開け放ち、周りを警戒する。
事故に合わないようにする理由もあるけど、私がもっとも気にしているのは、いつ赤い糸と繋がった相手と遭遇するかということ。
どんな作品でも、ファーストアタックはとても重要だ。
恋愛漫画界最古のお約束。パンを加えてぶつかり、転校生として出会う。から始まる出会いイベントは、青春を始めるにおいて一番大切なスタート地点と言っても過言ではない。
ここをミスしてしまえば、全てが水の泡となってしまう。
フラグが立つどころか、フラグが折れて面倒な関係になってしまうシチュエーションを、私は数多の恋愛漫画で見てきた。私は(その点においては)詳しいんだ。
だからこそ、道行く人。すれ違う人全てをさりげなく、しかしじっくりと観察し、私の赤い糸と繋がっていないかを確認したが、今のところ誰一人として赤い糸と繋がった人間はいない。
にしても、先ほどから周りで救急車の音がやたら響いてるけど、何かあったのだろうか?
それはさておき、もう学校も間近。
糸も学校方面を指している。
ということは――運命の相手は私と同じ高校に関係者ということ!
うん! それなら色々と都合がいい! 学校に行きながらイベントが発生するなんて、なんて乙女ゲーム的、展開だろうか!
あー! 上がる! めちゃあがる!
物静かな同級生?
ちょっと、荒っぽい性格な先輩とか?
もしかしてもしかして、禁断の先生とか!?
夢膨らませ校舎を抜け、学校に入り教室に向かいつつ周りを確認する。
糸の効力なのか、何故かもう既に近くにいる気がする。
誰! 一体誰が私の運命の相手なの!?
そして、私は見つけたんだ――赤い糸の最果てを。
「なぁ、あまのっち! 宿題みせてくれよ~!」
「またか? ふふっ、しょうがないやつだな」
目元上まで伸びた黒い髪。
猫目で、よく見れば整った顔立ちをし、スラリとした体型が特徴的な男子生徒。
この時の私の目には、彼がまるで少女漫画のヒーローに見えた。
その姿に、私は一瞬で心惹かれてしまったのだ。
これが、私と群青雨乃との初めての出会いだった。
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