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Episode.3-9」への応援コメント


  • 編集済

     すっかり時間をかけてしまいましたが、楽しく読ませていただいております。
     今回は、ここまで読ませていただいた感想をざっくりと書かせていただきます。

     最初に申し上げておきたいのは、やっぱりこの作品は面白いということです。ローズお姉ちゃんと主人公のやり取りも含めて、やや古いジェンダー観をわざわざこの世界設定で、今の時代に書くのはちょっと問題視されそうな気もしますが、それぞれの登場人物たちがそれぞれに、欲望のままに生きるのではなく、倫理観や信念を持って生きているのは本作の魅力だと思います。主人公と他の王国騎士たちの関係にしても、男と男のぶつかり合いが熱く描かれています。こんな言い方をして褒め言葉になるか分かりませんが、時系列が入り組んでいても「何言ってんだ、こいつ?」となることはありませんし、論争の次元が低いという印象も受けません。
     ただ、その上で、全体として指摘しておきたいことがいくつかあります。

     1つ目は――僕が批判的なコメントを書くときに説明不足だったことが原因なら申し訳ないのですが――、( )に括られた記述が多いことです。基本的には、( )を外した方が読みやすくなると思います。
     僕が慧さん宛の修正案に( )を付けたのは、「修正するとき、( )内の文言を入れるか入れないかの判断は慧さんにお任せします」という意図があったからで、( )をそのまま書けと言ったつもりではありませんでした。誤解を与える書き方をして、充分な解説も付けず、申し訳ありません。
     一般的には、小説における( )は、実際には発言していない心の声を示したり、1文が長くなるときに省いても構わないくらいの情報を補足として入れたり、語り手(地の文を書いている立場)によるツッコミを入れたりするのに使うようです。
     例文を書きますと、

    ――――
    (なんてことだ……)
     と俺は思った。

     ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は、序盤が極めて退屈なことで知られるが(さらに言えば日本語訳は1文が長くて読みにくいが)、世界中の偉人が読む価値があると言う、名著の中の名著である。

     俺は居酒屋を出て、自転車にまたがり(自転車でも飲酒運転は条例違反だが)、ラーメン屋に向かった。
    ――――

     本作『LA』での( )の使い方を見たとき、たしかに省いても意味が通じそうな箇所で使われていることもあるのですが、情報の性質を考えたときわざわざ( )を付けるべきとも思えないので、基本的には外して構わないと思います。
     外した場合に文章が不自然になるものだけ( )を付け続ければ、それでいいと思います。

     2つ目は、動物たちとEpisode.3の女の子の名前が明かされていないことです。
     主人公に名前がないのは物語上の仕掛けということで構わないのですが、動物たちの見た目はおろか、肉食なのか草食なのかさえ分からない(カバやゾウなど、草食動物の方が肉食動物より体も牙も大きいことがありますし、縄張り意識が強い上に凶暴化しているなら食べる気がなくても襲ってはくるでしょうし)となると、場面を頭の中に思い描くことが出来ませんし、どれくらい強敵なのか見えてこないので主人公が苦戦してもいまいち乗り切れません。たとえば、凶暴化したオオカミを何とか撃退した後、今度は凶暴化したクマが現れた、という展開であれば、どれくらいヤバいのか何となくイメージを持てます。現在の地球にいるような動物ではないにしても、イメージのヒントが何か欲しいです。
     それから、せっちゃんです。「ひれを持つ動物」と執拗なまでにくり返されると、ヒレしか特徴がないような印象を受けます(「せっちゃん」と連呼してもそれはそれで緊張感が出ないので、「セツナ」とか「セツコ」とかの本名があるならそっちで呼んだ方が良いでしょうね)。肺呼吸できて地面を歩けるようですが、カエル、サンショウウオ、セイウチ、あるいは全く別の化け物なのか分からないので、親しみを抱けません。嫌な言い方をしますと、読者としてせっちゃんの安否に興味を持てないので、アーキユングやギルトライルの剣が通じないならもうぶっ殺していいんじゃないの、と思えてきます。そもそもこの女の子が信用に足る人物か分かりませんし、もしかすると彼女がせっちゃんを育てる過程で人間を餌にしていたのかもしれませんし……。もちろん、読んでいる最中は主人公に頑張ってほしいと思えるのですが、作品を離れて冷静になってみると、そんな考えも湧いてきます。
     この女の子も、たしかに自己紹介している時間はないですし、彼女の正体が分からないのも面白みだとは思いますが、名前くらい言ってもいいんじゃないでしょうか。ローズお姉ちゃんやエルザとの一件もあり、「女の子だから守っている」印象が付きまとうと言いますか、主人公が彼女に名前を尋ねないことも含めて、本人の人格ではなく性別や外見という属性にしか関心がないともとれてしまうんですよね。

     3つ目は、Episode.2のラミスでの戦いとそれ以降、決定的な場面が多すぎる、あるいは長すぎることです。話の展開として、予断を許さない状況が続いていることは理解できますが、緊張感が高まって主人公が敵に立ち向かう状態から回想シーンに飛ぶという展開がこう何度も繰り返されると、さすがに疲れてきます。
     野球漫画でも、試合の間、一球入魂でずっと緊張しっ放しというわけではありませんよね。もちろん、本人たちは真剣なのですが、最初の何イニングかは「あのピッチャー、今日は調子が悪そうだぞ」とか「あのバッター、内角が苦手だったはずだが……」などの腹の探り合いがあって、点を取ったり取られたりして緊張感を高めた後、9回裏に「これがラストチャンス! 絶対に打つ!」みたいな展開になるはずです。
     スポーツ以外のパターンとしては、比較的小さな出来事を経ながら舞台が整って、それらを凌駕する大事件が起こって、色々と苦戦した後、これまで積み重ねてきた経験を活かした主人公たちが勝利して、めでたしめでたし、だと思います。アメコミ映画はうろ覚えなのでハリポタの『賢者の石』(映画版)を例にしますと、

    「魔法使いの学校に入学したら、ハーマイオニーという、頭でっかちで鼻につく女子が同学年にいるぞ」(出会い)
    「授業で浮遊術(ウィンガーディアム・レビオーサの呪文)を習ったとき、ハーマイオニーに呪文の発音をバカにされて、主人公ハリーの友人ロンが不機嫌になる」→「ロンの陰口を聞きつけたハーマイオニーが傷ついてトイレに引きこもる」(個人レベルの、比較的小さな出来事)
    「その夜、学校にトロールが侵入して学校中パニック」(学校中が注目するレベルの大事件が発生)
    「ハーマイオニーはトイレにこもったままだから、トロールに襲われるかもしれない。助けないと!」(主人公が事件/敵に立ち向かう動機付け)
    「ハリーとロンが駆けつけるが、1年生が倒せる相手じゃない」(苦戦)
    「ロンがとっさにウィンガーディアム・レビオーサ」(比較的小さな出来事での経験を伏線として回収)
    「トロールを倒せた! 事件をきっかけにハリー、ロン、ハーマイオニーが仲良くなった!」(事件解決、めでたしめでたし)

     本作『LA』の場合も、Episode.1では概ねこの流れになっていると思います。ですが、Episode.2に入って以降、(話の構造のせいもあって)肝心な部分が見えづらくなっています。

    ・主人公と仲間たちにどういう手札があるのか。
     ※もちろん、最初から全て明かしてしまうと面白くないですが、何が可能で何が不可能なのかに大体の見当がつかないと、緊張感が出ません。そのうち「誰それの剣は因果律逆転の剣! 剣を振る前に切断という結果を実現する!」とか、「誰それの剣は無我の剣! あらゆる執着を断ち切って涅槃の境地にいざなう!」とか言い出しそうで怖いです。それに、後になって想定外の強力な技が出てくると、「最初からそれ使っとけよ」という気にもなるかもしれません。

    ・手札を切るのにどのような制約とリスクがあるのか。
     → いつでもどこでも必殺技を放つわけにはいかないとしたら、それはなぜか。技を使ったら体力を激しく消耗してしまうとして、その問題は克服可能なのか、主人公は克服する努力をしたのか。

    ・現れた敵はどのくらい強いのか。
     → 歴代の王国騎士なら倒せるレベルなのか。倒せないとしたら普通はどう対処するのか。

    ・主人公はどういう必要性があって敵を倒すのか。
     → 撤退するという選択肢はないのか。誰かを守るために戦わねばならないとすれば、その人は主人公にとってどれくらい大切な存在なのか。
     ※メタ的な話になりますが、単に町を守るとか女の子を助けるとかだけではなく、物語としてどういう流れがあってその場所や人が大切になるのか、その戦いを経て主人公や他のキャラたち、あるいはその関係にどのような変化が起こるのか、といった要素が欲しいです。それらがないと、せっちゃんのときと同様、読者があまり興味を持てない事態にもなると思います。

    ・主人公が繰り出した技はどのくらい強力なのか。
     → 気合いと根性で押し切るのか、効果的なタイミングや部位を狙うという技術力で乗り切るのか。

     もちろん、本作の時系列が入り組んでいて、主人公と仲間たちの事情がなかなか明かされないという構成も、本作の魅力だとは思います。もし時系列を整えたり、回想シーンをひとつにまとめたりしたとしても、今以上に面白くなるかは分かりません。ただ、おそらく僕に限らず、ずっと緊張しっ放しだと逆に緊張感がなくなってくるでしょうから、緊張と緩和の流れにもう少しメリハリを持たせることを検討なさっても良いのではないかと思います。
     話の構成を変えないにしても、本作の描写はもう少し文字数を減らしてもいいと思うので、内容が重複している記述については削ることを視野に入れていただればと思います。この点に関しては、追々細かい箇所を見ていくときに、僕からもご提案させていただくつもりです(いつになるか分かりませんが)。

     長文失礼しました。

    作者からの返信

    あじさい様

    コメントありがとうございます。
    また、ここまで読んで頂いてありがとうございます。

    ()については単に私が無知だっただけです。
    ()についてはよく調べていなかったので、誤った使い方をしていることにも気づきませんでした。ご指摘どうもありがとうございます。

    諸々のご意見についても参考になるものばかりで頭が下がります。
    言われたことを何回も読み直して今後に生かせるように努めます。

    一点だけ、これはあじさい様も文頭のあたりでおっしゃってることにも関わっているのですが。
    ここまで読んで頂いているので何も隠す必要はないですが、『ひれを持つ動物』と表し、直接的な表現を避けているのには理由があります。
    逆に、『鳥』や『馬』や『亀』など、直接表現しているのにも理由があります。

    前者は傷付ける対象、後者は傷付けない対象です。
    多少、暴力的な表現を含むため、動物については慎重に表現しております。
    ジェンダーのお話にもあるように、現代はペット問題なども敏感で、特定の動物を殺す表現は可能な限り避けたいと思いました。

    『海に生きる、牙を持つ、ひれのある動物』となれば、海象(せいうち)です。
    『四足で歩き、危険を感じたら立ち上がり、大きな体と爪を持った生物』となれば、人によっては解釈は色々あるかもしれませんが、私は熊を思い浮かべました。

    現代において、人里に下りてきた熊がどういう末路を辿るかは書きませんが、そういう人たちからの問題を回避したいという気持ちがあります。
    (魚だけは獲って食べたという直接的な表現をしてしまっていますが)
    そのため、一部を除き、今後もこういった表現になると思いますため、大変恐縮ですがご容赦いただけましたら幸いです。