4☆2学期スタート! & 魔物出現!?
炊きたての白米に、体が温まるお味噌汁。ししゃもにウィンナー、千切りしたキャベツに、目玉焼き──。
「ゼッタイにゼッタイに、目玉焼きにはマヨネーズなんだからっ!」
「この
と、言い争うあたしたちの前で、悠然と朝ご飯の目玉焼きにソースをかけるじゅーおじいちゃん。
じゅーおじいちゃんがソースをかけるのはもう見慣れた光景だからいいとして、まさか目玉焼きにしょうゆをかける
やっぱりりっかとは、ゼッタイ気が合わないっ!
「さて、と。もう8時じゃ。二人共、久々の学校、気をつけて行ってくるんじゃぞ。らなちゃんが魔物に狙われ危ない目に遭わぬよう……りっかくん、頼んだぞ」
「はい」
やけにはっきりとした真面目な返答に、なんとなくドキッとする。
もー! だから、じゅーおじいちゃんとりっかのその謎のやり取りが気になるんですけど! ゼッタイ何か! あたしに隠してる。
「ああ、そうじゃ。二人に伝えるべきことをつい忘れるところじゃった。いいかい、魔物を封印する際には、今から言う呪文を必ず唱えるんじゃ」
はいぃい? 呪文?
「わかりました」
りっかが素直に答えるものだから、あたしもなんだか悔しくなって、渋々じゅーおじいちゃんの声に耳を傾けた。
「あと、これを肌見離さず持っているんじゃよ」
じゅーおじいちゃんから、あたしには水色のリボン。りっかには青いリボンが手渡された。
肌見離さずっていっても、ポケットなんかに入れてもし落としちゃったりしたら駄目だから、あたしはその場で、ツインテールにした髪の片方にリボンを結んだ。りっかも、自分の腕にぐるぐると巻き付けている。な、なんか腕に巻くの、ちょっとカッコいいかも!?
「「行ってきまーっす!」」
久々のランドセルを背負って、いざ登校。
「ついてこないでよっ」
「なにそれ。ひっでーな。今日から同じ小学校だろーが」
うっ。そうだったよ。これがあと、どのくらい続くんだろう……。
並んで歩いてるわけじゃないけれど、背、あたしより少し高いんだな……なんて、ぼんやりと思いながら歩いてたら、家から徒歩3分の学校に気付いたら到着していた。
体育館に全校生徒が集まる、毎年恒例の、なっがーい校長先生のお話が終わった後の、クラスでの朝の会。
事件は、ここで起きた。
「転校生を紹介します。新しい5年1組の、皆の仲間よ」
と、担任の幸本先生が立夏を黒板の前に立たせ、分かりやすいようにチョークでりっかの名前を書く。
「泉立夏です。隣町の結月小から転校してきました。サッカーが得意で足には自信があります。好物はラーメンです。よろしくお願いします」
パチパチパチ、とそこら中から拍手があがる。
へぇー、サッカーにラーメンか……
と、机の上で頬に片ひじをつきながら、あたしも皆と同じようにりっかの自己紹介を聞く。だって、あたしだってりっかとはほとんど昨日初めて知り合ったようなもんだし、目玉焼きにはしょうゆ派だってことを知ってる以外は、クラスのみんなと同じようなもん。
「りっかー、昼休憩一緒にサッカーやろうぜ!」
「おー、やろやろ!」
「おれ結月小に知り合いいるから、また皆で遊ぼーぜ!」
「おー、遊ぼー遊ぼー!」
なんて、すぐに男子の友達が何人か出来た様子の、ラーメンが好きらしい同居人。
しかし次の瞬間、
「あ、あと、そこにいる桜門らなさんと一緒に暮らしてます」
あたしの方についっと手の甲を向け、澄まし顔で言い放ったりっかに、クラスは騒然となる。
「「「ええええっ!?」」」
一瞬理由がわからなくて、きょとん、とするあたしの方をみんなが一斉に振り向く。
いやいやいや、え? え?
なんで言っちゃうのー!!(怒)
「しっ、シリマセン! シリマセンそんな事実なんて!」
カタコトになって焦るあたしに、クラスの女の子たちは興味深々の目を向けてくる。
男子は男子で、
「おいおい、転校早々問題発言かよ」
だなんて、勝手な解釈してるし!!
こればっかりには、あたしはもう……
怪力だとかそういうんじゃなくて、こんな形でクラス皆の注目を浴びることが恥ずかしくて……、涙で少し潤んだ瞳で、キッとりっかをにらみつけた。りっかは、
「なんてね」
真面目な顔で、次にはこう言った。
「オレは、ただの居候の身ですー。桜門電器商会の手伝いなんかをする予定で、しばらくの間らなさんのおじいさんにお世話になる予定です。らなさん、変な言い方しちまってごめんなさい」
何が、らなさんじゃあああい!
あたしは胃がムカムカしてたまらなかったけれど、気付いてしまった。隣の席に座るあたしの親友のまりもちゃんが、ホッと息をついて、あからさまに肩をなでおろしたのを。
案の定、その日を振り返る帰りの会が終わって、皆がランドセルを背負って帰り支度をしていた時。
「りっか君の、あの凛とした顔と性格が格好いい」
あたしは、くるんとカールしたくせっ毛の髪にフリルの洋服が本当によく似合う、天使みたいなまりもちゃんから恋の相談を受けていた。
「いやいや、まりもちゃん! あいつはやめといたほうがいいって! 思い直したほうがゼッタイいい!」
「なんで? 私は正直らなちゃんが、うらやましい……」
「……」
「ねぇ、また桜門電器商会に遊びに行かせてね? 本当、神様って不公平……」
「だぁから、あたしだってよくわかんなくて、おじいちゃんが何か考えてるみたいだから、仕方なしに……」
と、まりもちゃんを説得していたあたしと、少し離れたところで男子の輪の中で楽しげに話していたりっか。
なんでもない和やかなクラスの雰囲気。
りっかも今日一日普通に過ごしてた。転校生ってやっぱり特別な立場に立たされるわけだから、色々と気をつかったり、しんどいんだろうなーって、ちょっとだけ心配してたけど、そんなことは関係なかったみたい。良かった良かった──って、どうでもいいけど! あんなやつ! ──そんなことを思っていた、次の瞬間!
────バシッ!! キィイイイーン……
「!?」
何か、突然爆音が聞こえて、体中に電気が走ったかのような──そう。まるですぐ近くに雷が落ちたかのような衝撃が、全身を貫いた。
「? らなちゃん、どうかした?」
まりもちゃんが不思議そうに尋ねてくるけど──
「らな。ちょっと」
「なっ、なに?」
いつの間にやら男子たちから離れたりっかに腕をつかまれ、教室を出た。遊具が近くにあるものの、プチトマトやキュウリなんかを栽培している人気のない校舎裏へと、連れて行かれた。
「ねえ! さっきのあの気は何? 何かめちゃくちゃ嫌な感じがしたん……」
「静かに」
りっかに必死で紡ごうとした言葉を遮られる。
「昨日、らなとオレがついに手を組んだのを、魔物に勘付かれたんだよ。勘付かれたっていうか、気付かれた。さすがだな。早い話、今ここで、闘うしかない」
空が
でも、おかしい。不穏な風がびゅうびゅう吹くのも、雨が降っているのも──あたしたち二人がいる、この空間だけ。
寒くもないのに、背筋にゾゾッと、謎の悪寒が走った。
「来た。
はいぃい!?
りっかのその背中から、さり気なくあたしを守ろうとしてくれてる感は伝わってきて、ちょっぴり安心はするんだけど……ここにはじゅーおじいちゃんもいないし、やっぱり命の危険の予感!! やばい。魔物との闘い方なんて、教えてもらってないし……。今朝呪文を聞いただけ! どうしよう。
「……なにかあったら、あんたを
本音でそう告げると、
「……ああ。いいぜ。逃げろ」
りっかに、目を伏せた悲しそうな
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