Ⅶ 屋しきの中で 1つめの朝②

「ほら、ここが食堂だ。

 おまえたちみたいな奴がたくさんいるから仲良くしろよな。」

「え、うらのって? ぼくたちと同じ奴って? え? え? どういうこと?」

「……おまえなぁ、質問が多すぎるんだよ。

 まあいい、答えてやる。

 屋しきのおえらいさんが食事をするごうかな場所が『おもて』。そしてあたしたちみたいな下働きが食事をするところが『うら』。あたしたちのいんごだ。……ここまではわかったか?」


 ミリモンはこくんとうなずいた。


「それで次の質問は、お前たちと同じで行くあてもなく、帰る場所もない、そんなやつらのことだ。この街は人間しか受け入れられないからなあ……」


 最後の言葉は一人言みたいだった。


「さぁさぁ、質問はそのくらいにして食った食った! せっかくの料理が冷めちゃうじゃない」


 マコはそう言いながら料理を持ってきた。……カレーだ。


「材料はびんぼうだけど一生けんめい作ったからなー!」

「このカレーはねぇ、まごころってもんが入ってんだよ!」

「名付けて、美人なお姉さんのまごころ入りビンボーカレー!」


 ギャハハハハ、というわらい声がひびく。ガチャガチャとうるさい食器の音にも負けないくらいの声。


「いただきまーす!」


 ふと気付くとよーせーくんはすでにカレーを食べはじめていた。


「わっ、よーせーくん、早いよ!」


 ミリモンもあわててカレーを口にした。食べたことの無い味だけど、何か美味しい。


「おはよう、そこのうさぎに似たみどりくん。

 この食べ物、美味しいわよね。」


 いきなり話しかけられたのでミリモンはびっくりした。しかも、話し方がなれなれしい。


「おはようございますっ。」


 ミリモンはぶすっとして話した。

 すると、その犬のような感じだけどひたいに赤い宝石がはまっている女の人は、こう答えた。


「何、そんなに怒んなくったってv

 私の名前はワンナ。君は?」

「ミリモンといいます。」


 ミリモンは更にぶすーっとして答えた。


「だぁかぁらぁ、そんなに怒んないでよぅ。

 んでさぁ、君って何さい? 何でここにいるの? どうして? 何で……」


 その後もワンナのおしゃべりはつづいた。


(疲れた……)


 そう思ってとなりを見ると――すでによーせーくんはカレーを食べおえていた。


「ごちそーさまでしたー。

 あれ、ミリモン、まだ食べてないの? ボク、へやいってるね~」


 ダメだ。よーせーくんの性かく上一人にしておくのはきけんすぎる。


「あっ、ごめんなさい、ぼくもう行かなきゃ! 又いつか~。」


 そう言ってミリモンは風のように走り去った。

 あとに残されたワンナはこうつぶやいた。


「んもう、もっとおしゃべりすればいいのに……」

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