Ⅵ 屋しきの中で 1つ目の朝①
「ふぁ……マコはむかえに来てくれるって言ったけど……」
ミリモンはつぶやいた。
「本当に、信用してもいいのかなぁ……」
その時だった。
びゅんっ! と音がしたかと思うと、いきなりマコがあらわれた。
「まこー。」
「どどどどどどっから来たの?」
「ったく、このマコ、やくそくしたことは守る女だぜ!」
「えー、まこっておんなだった……もが……」
ミリモンはよーせーくんの口を思いっきりふさいだ。
「あは、あはははは……」
マコはこっちをギロっとにらんだが、再び話しはじめた。
「きのう、あたしには不思議な力があるって言ったじゃん?
そのことなんだけどね……実は……」
ごにょごにょごにょ。
「えーっ、気流使いー!?」
「……っておい、言うなよ!」
「あ、ごめん、つい……」
気流使いとは、この国、フェーバ大陸にもかぞえるほどしかいない魔法使いの一類である。
いわゆる「気」せんもんの魔法使いで、この「気」があやつれるとかなりすごい。
たとえば、風をおこす。相手をたおす。けがや病気を治す。物を作り出す。人の気持ちをあやつる……など。
そして気流使いは何の勉強もしなくても気流使い十級のしかくをとれる。気流使い十級は魔術師五級と同じあつかいを受ける。魔術師五級は、この世界で言えば東大を一年で卒業したようなもの。つまり、気流使いは小学生にして東大を一年で卒業できるような、そんなくらい才能にめぐまれているのだ。
「えっえっ、じゃあマコも気流使い十級のにんてい書見せてよ! ぼくずーっとあこがれだったんだ! ねぇ、いいでしょ?」
するとマコは、少し困ったようなかおをした。
「うーん、それがな、あたし、その級とってないんだ」
「えーっ、何で? 気流使いなら無条けんで十級とれるはずだよー!」
「ないもんはない」
「なんで」とミリモンは聞こうとしたが、なんだかマコが泣きそうだったので、聞くのをやめた。
しばらくのちんもく。
しーんとした中……
ぐー、きゅるるるるる……
「おなかすいたぁ~……」
よーせーくんだ。
「そういえば、ぼくもおなかすいたなぁ」
マコがわらってこう言った。
「全く、食いしんぼうなんだから。
さ、こっちこっち」
そして三人は食堂へ向かった。
かげでニヤリとしている者にも気づかずに……
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