Ⅲ 夜がきて
「あー、今日はどこにとまろう?」
「もり!」
「……あのね、ぼくたちは今のじゅくセットも何も持ってないの」
「びんぼー!」
「そういうもんだいじゃなくてね……
あー、どうしよう……」
さっきから色々な家のドアをノックしてたのもうとは思っているのだがやっぱり勇気が出ない。ずっと守られてくらしてきたせいだろうか。
「どっかのおうちにとまるのー?」
「そうだよ……」
「じゃああのおうちでっかいよ~!
おーーーい!」
「わっわっ、ちょっと待ってよ!」
よーせーくんは多分この街で一番でかいであろうおやしきを目ざして飛んでいった。
「うわ、速いよー!」
もうすでにミリモンとよーせーくんの間は300Mくらいはなれていた。
「はぁ……やっとおいつい……た……はぁ……」
おいついたころには、ミリモンはくたくただった。
「んー、ミリモンおそーい!」
よーせーくんはそんなことを言っている。ミリモンは思わず大きな声を出してしまった。
「よーせーくんが速いんだよっ!」
「だれだっ!」
いきなりするどい声が飛んできた。本能的にヤバいと思って、ミリモンはにげだした。
「げぇ、あのおやしき、人間のおやしきじゃん!」
ミリモンはこんなに人間と近づいたのははじめてだった。むれで「マチ」とか「ミヤコ」を作り、高い文化をもつものの他のしゅぞくとは一切関わらない不思議な生き物。だからミリモンはあまり人間には近づかなかった。
「ここ……人間の街だぁ……」
ミリモンはくらっとした。人間のことだ、ミリモンを見つけたらどうすることか。
そんなとき。
「ねぇ、そこの緑色のうさぎみたいな子!」
ミリモンはハッとした。だれかがミリモンをよんでいる。
「きみさぁ、正面から堂々と入ろうとしてもむだだよ! きぞくじゃないんでしょ?
ほら、早くしないとけいび員につかまっちゃう! そこのピンク色の丸いのも早くー!」
ミリモンは思いがけない人間の行動に少し戸まどったが、すでによーせーくんはうごきはじめている。それにそうだ、どっちにしろここにいたらつかまってしまう。ミリモンはけつろんを出して女の子らしき声がする方へ走っていった。
「あれ……? 俺ねぼけてんのかな……さっき確かにだれかの声がしたんだけど……」
そう言うとけいび員は門の中にもどっていった。
(助かったぁ……)
ミリモンは力がぬけていくような気がした。しかし、いきなりあの女の子の声がした。
「あんたたち、なにしてるの! ラルクガルドの住人でもないくせにのこのことけいび員の前に現れるなんて、ただのバカだよ、全く! あたしに感謝してよね!」
ミリモンはぽかーんとしていた。何がなんだかさっぱりだったからだ。
「……ふぅ、まぁいいわ。
今日はあんたたちのねどこを用意してあげる。こっちきな」
ミリモンはやっと長い一日がおわったと思った。
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