Ⅳ 屋しきの中で 1つ目の夜

「とりあえずここにとまりな」


 そうあんないされた部屋はしっそだけど月の光がたくさんふりそそいでいた。ミリモンはいい部屋だと思った。


「いい、明日太陽が4分の3位姿を現した時むかえに来るから、絶対にうろちょろうごきまわったり大声を出すんじゃないよ。あたし以外のだれかに見つかったら……」


 女の子は少し声を落として言った。


「死んでも、知らないからね」


 ミリモンはゾーッとした。絶対にうるさくなんかするもんか、と思った。

 でも、よーせーくんはちがった。のんきに歌なんか歌っている。


「ちょっと、よーせーくん、聞いてた?」


 ミリモンは小さく、でもするどい声で言った。


「……ん~? 何?」


 案の定、よーせーくんは聞いてなかったようだ。


「だからー……」


 ミリモンは女の子に聞いたことをかんたんにわかりやすく話した。


「へぇ、わかった~」


 本当か、と思いながらも、ミリモンは質問をした。


「ねぇ、さっき歌ってた曲、何?」


 何故そんなことを聞くかというと、さっきよーせーくんが歌ってた曲のメロディがとても美しかったからだ。


「えー、なんかしってたの」


 ……よーせーくんというのはなぞだ。


 その時、女の子がパンパンと手をうった。


「さぁ、おしゃべりはそれくらいまで。何か質問はある?」

「うん、ある」


 ミリモンが言った。


「さっき言った『ラルクガルド』って何?」

「お前、そんなことも知らないのか?」


 女の子は呆れたかおをしながらも「ラルクガルド」の説明をしてくれた。

 少し説明というには短いか。


「ラルクガルドは、この街の名前」

「へぇ、街にも名前なんてあるんだ」


 ミリモンが育った村は名前なんてなかったから、そんなこと知らなかった。


「他には?」


 別にないよ、とミリモンが言い、ボクも~。とよーせーくんが言うと、女の子は少しショックそうなかおをした。


「……けっきょくあたしの名前聞いてくれなかったな……

 まあいいか。あたしの名前はマコ。正しきな年はわからないけど、不便だから12か13ってことにしてある。ここのメイドなんだ。よろしくな。」

「よろしく」

「よろしく!」


 ミリモンとよーせーくんとマコは、改めてあいさつをかわした。


「げ、そろそろ帰らなきゃ……少し感づかれてる……」


 そう言うとマコは部屋から出ようとしたが、ふと足を止めて言った。


「そうだ、何か用がある時はあたしの名前を呼んでな。あたし、耳がめちゃくちゃいいんだ。

 あと、ちょっと不思議な力もあるんだけど……話すと長くなるから、明日な。

 じゃ、おやすみ!」


 そう言うとマコは走り去っていった。


「ふわぁ~……」


 急にあくびが出た。


「よーせーくん、ねむくな……」


 すでによーせーくんはねむりにおちていた。


(そっか、生まれたてだもんな)


 そしてミリモンはベッドにねっころがった。それから、これから一体どうすればいいのか、よーせーくんは何者なにかを考えながら、ふかいねむりに落ちた。

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