5 チョコと放課後

浮かれた知奈の気持ちは、しかし、教室に戻ると、沈んだ。


優花達は、修也の事が好きなのだ――この問題を、解決しなければならない。


修也は、知らん振りで寝ている。先ほどの出来事など、夢だったかのように感じる。


そんな微妙な気分のまま、休み時間は終わり、授業は始まり、終わり――あっという間に放課後になった。


「知奈~、帰ろ!今日、ちょっと用事あるんだけど、いい?」


千里は、知奈を明るく誘った。


「あ・・・あたしも用事あるから、教室で待ち合わせしよ。」


そっか、じゃ、後でね、と明るく言うと、千里は教室を出て行った。


教室に、既に修也の姿は無い――しかし、あそこに居るはずだ。裏庭に・・・



「あのっ・・・」


裏庭から聞こえてきた声に、知奈はびくっと体を震わせた。


その声の主は、すぐにわかった。甲高いこの声――優花。


その他にも、優花の仲間の智美達がいる。その中には、千里もいた。


知奈は、反射的に適当な物陰に身を隠した。


「好きです・・・付き合って下さい!」


相手――修也は、無表情に、優花の渡したチョコを返した。


優花の手がすべり、チョコは地面に落ち――ぱりん、と音をたてて砕けた。


「あ・・・」


呆然と、優花は立っていた。


「・・・・・・告白するなら、一人で来い。」


その修也は、冷たいままの修也だった。


優花は、うわぁぁぁ・・・と泣き声をあげ、崩れ落ちた。智美がそれをなだめる。


「千里、行こう?」


智美が言った。が、千里は、「砕けたチョコ、片付けてから行くよ。」と、それを断った。


それを疑う様子も無く、智美達は優花を連れ、裏庭を去った。


裏庭には、千里と修也、物陰に隠れた知奈だけが残された――

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