4 白い世界

ミキはユナの名を呼びつづけ、同時に暴言を吐く。しかしユナは、動じなかった。


それを繰り返し、辿りついた場所は、ひっそりとしている裏庭だった。


ユナは、深く溜息をつき、コンクリートの段差に座った。


「ユナッ!いい加減、何か言えよ!」


荒い息で、ミキが言った。


ユナはそこで初めてミキの存在に気が付いたらしく、吃驚した表情を見せる。


ふいに、辺りが白く輝いた。


聞いたことの無い、ユナの声が聞こえた気がした。



「・・・ミキちゃん。」


ころころとした可愛い声に、ミキは目を覚ました。


気を失っていたのだろうか。記憶がはっきりとしない。


「あ・・・気が付いた?」


ミキはその声の主を見て、目を見開いた。――ユナだ。


「ユナッ・・・さっき、何したんだよ!」


「そんな事言われても・・・」


ユナは困った表情を作る。


「私がやったんじゃなくって、ジェルさんがやったんだよ。」


「ジェルさん?」


ミキは、気が付いた。真っ白なこの世界に、自分とユナ以外にも変な人物がいる、と――


「あんたが、ミキ?」


その変な人物は言った。とても美しい顔立ちをしている。背中には大きな羽。年頃は、ユナ達よりもわずかに上だろうか。


「何で、そんな事言わなくちゃいけないの。大体あんた誰?」


ぶっきらぼうに、ミキは言った。


「あの、ジェルさん。」


「何?」


「このひと、ミキちゃんだよ。」


「そう。」


ジェルは、短く返事をしただけだった。


そしてしみじみと、ミキの顔を見始めた。


「う~ん・・・ユナの話聞くと、もっとブスかと思ったんだけどな。魂の割には、人間っていう顔してる。」


ミキの顔は、カッと赤くなった。


「ユナ、あんたチクったね!」


「そういう顔は、やっぱりブス。ユナには、叶わないね。」


「あたしがユナよりブス?んな訳無いじゃん。」


そう言いながらも、ミキは少し焦っていた。――あたし、ブス?


「ほら、そうやって自分に自信が無いから、けなされた時焦る。」


うたうように、ジェルは言った。


ユナはじっとそのやり取りを見ていた。顔には、何も浮かんでいない。


「――さて。」


ジェルは、今度はゆっくりと、静かに言った。


「心の準備は出来たか?ミキ。」

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