2 開始の時

女子ばかりの学校。


ユナは、今年度の初め、転校して来た。


その可愛い容姿に興味を持ち、生徒達は積極的にユナに話し掛けた。しかし、ユナはニコニコ笑うばかり。


段々気持ち悪いと感じる者が多くなり、やがてユナはひとりになった。


それまでは、それでもまだ良かった。


ある日の休憩時間、ミキとその仲間のミサトとチカが、クラス全員に言ったのだ。


「あたし、ユナに虐められてる――!」


わぁっとどよめきが起こった。「まさか」「ユナちゃんそんなことまでするの・・・?」という戸惑いの声も聞こえた。


しかし、ユナの事を嫌いだと思っている者も少なくはなかった。そうでなくても、周りの雰囲気に飲み込まれてしまう者も。


「ミキちゃんが虐められる訳無いよね。あの強気なのに」


「だよねー。でもいいんじゃない。この際そういう事にして、ユナのこと虐めようよ」


こんな会話も見受けられた。


そして虐めは始まった。


主にミキと、その仲間がユナを虐めた。


ユナは何にも言わなかった。ただ、今まで通り笑っていた。


時が経つにつれ、虐めの形は段々と定まって行った。


休み時間が始まると、クラス全員がユナの悪口を言い始める。ミキ達が、面と向かって暴言を吐く。


毎日、この繰り返しだった。クラスの殆どは、面白半分でやっていた。


何日間やっただろうか――やり始めて随分と経ち過ぎて、誰も覚えてはいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る