星明かりと消灯【裏1】


この世界は、ある一冊の王道ファンタジー小説の中にある。

お姫様が魔王にさらわれ、勇者が救い出すといったありきたりな物語と、天文学に関する知識でこの世界は形成されていた。


そして、男はこの世界の人間ではない。


なんの因果か、彼はこの本にとらわれ、そして閉じ込められてしまったのだ。

男はこの本の内容を知ってはいたが、脱出方法などわかるはずもなかった。

「元の世界に帰れない」

それは彼にとって、この上ない救済を示していた。

この男は、現実世界に疲れきっていたのである。

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