stage28.危難
そして携帯電話のGPSを起動させると、友樹の居場所を示した。
GPSが指し示す場所へ向けて、久遠は運転する。
「ここ、どこなんだろうね?」
「俺も知らない所だ。ひとまず行ってみれば分かることだろう」
有夢留の疑問に、久遠は落ち着いた口調で答える。
40分程車を走らせるとやがて、両脇を鬱蒼とした木々が生い茂る山道に入った。
「薄暗くて気味が悪いね。ホントにこんな所に早川さんはいるのかな……?」
「それは俺にとっても謎だ」
こんな言葉を交わしながら更に20分、車を走らせるとようやくGPSが示す場所へと到着した。
そこは人通りの全くない、山林の中だ。
周囲を見渡すも、人の気配は全くなく、ただ鳥の鳴き声が響くだけだった。
二人はおそるおそる、降車する。
「不気味だよ久遠……」
「ああ……」
誰もいないにも関わらず、有夢留と久遠は小声で言葉を交わす。
久遠が携帯電話を手に、GPSを辿って歩き始めたのを、慌てて有夢留も後に続く。
しかし虚しくも、辿り着いた場所は誰もいない雑木林だった。
「おかしい……こんな所をどうしてGPSが反応するんだ……?」
怪訝な表情を浮かべる久遠に、有夢留は注意深く周囲を観察していたが。
「まさか……そんなバカな……!」
唐突にそう呟いた有夢留を見ると、顔面蒼白になっていた。
「どうしたアム」
「久遠……足元を見て……」
「足元……?」
有夢留に促され、久遠は足元を見下ろしたところ、次第に状況がはっきりとしてきた。
久遠は咄嗟に今自分が立っている場所から、2~3歩飛び退くように離れる。
「ウソ、だろう……!?」
動揺を露にする久遠が今しがたまで立っていた場所には、くっきりと彼の足跡が刻まれており、地面が柔らかいことを物語っていた。
つまり、そこは掘り返された証拠だった。
「久遠……もしかしたら早川さんは……」
「それ以上言うな!」
有夢留の言葉は、久遠の怒声により遮られた。
「警察だ。今こそ警察を呼ぶべきだ」
こうして久遠からの通報により、警察が現場に駆けつける騒ぎとなった。
警察が掘り返した結果は、非常に残念なものだった。
土の中からは、
GPSが反応したのは、そうした理由だった。
警察からの報告により、久遠は愕然とする。
傍にいた有夢留も、浮かぬ顔して俯いていた。
そんな二人が乗っている久遠の車に、二人の刑事が歩み寄って来た。
「念の為、君に任意で事情聴取するけれども、どうするかね?」
年配の刑事に聞かれ、久遠は首肯した。
「はい……応じます……」
「その子は?」
落ち込んだ様子で返事をする久遠に、刑事は助手席に乗っている有夢留を訊ねた。
「この子は事件とは関係ありません。あ……よろしければこの車を運転して、私の住んでいる聖ヴェルニカ大学病院の男子寮へと送り届けてくれませんか?」
「久遠……」
「お前は家で留守番していろ。俺は警察署に行ってくる」
久遠は心配と不安が入り混じった有夢留へそう声をかけると、運転席から降りて刑事の車へと移動した。
有夢留は、若い警察が運転する久遠の車で、現場を後にした。
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