第42話 お金が嫌いな人間はいない

「ようこそ! 大井競馬場前駅へ!」

「よろしく! 駅娘!」

 駅娘をAIロボットとすると、無人駅に駅員さんがいないということはなくなる。

「大井競馬場前のクエストは、さまよえる大井競馬場前人レベル3を倒すだけです。」

「やったー! 楽勝だわ!」

 簡単なクエストに喜ぶ希。

「ダメだ! 僕は競馬場に行くぞ!」

 しかし、1億円に目が暗んだ望は、大井競馬場に行ってしまうのだった。

「やめなさい! 賭け事は、身を亡ぼすわよ!」

 希は、反対するのだった。

「少しだけ! ちょっとだけだから!」

 望は、希の反対を押し切って、大井競馬場に突入した。


「やったー! 勝ったぞ! 持ち金が10倍だ! この調子なら、1億円も夢じゃないぞ! ワッハッハー!」

「いけるわ! 勝って勝って、飛空艇を買うのよ! キャッハー!」

 望と希は、ビギナーズラックを体験していた。


「ワッハッハー! 人間はなんて愚かなんだろう! ワッハッハー!」

 LAWS国家試験の試験管たちは、望たちの様子を見て笑い転げていた。

「素人は、これだから困る。一度勝っただけで、自分には賭け事の才能があると思い込んでしまう。」

「ビギナーズラックは、借金生活の始まりだ。ワッハッハー!」

「それに競馬にのめりこむと、メインレースは15時代。どうやって競馬場から脱出するのかな? ワッハッハー!」

「競馬場から退出する時は、持ち金が全て無くなった時だ! ワッハッハー!」

 LAWS国家試験の試験管たちは、競馬新聞を握りしめている望を見て笑っていた。


「ま、負けた!? この僕が競馬に負けたというのか!?」

 予想通り望は、持ち金が無くなった。

「だからカジノなんてやめておけば良かったのよ!?」

 希はお怒りだ。それもそのはず、一般大衆が面白くないゲームと感じるのは、本編と関係のない「敵を10匹倒せ!」とか「オリハルコンを10個集めろ!」とかのつまらないクエストだそうだ。

「この悔しさは、さまよえる大井競馬場前人にぶつけてやる! でやー!」

 望は、競馬で負けた悔しさを戦いに向けた。

「そうよ! その調子よ!」 

 望たちは、さまよえる大井競馬場前人レベル3を倒した。しかし、競馬場で遊んでいた間に4時間も過ぎていたのだった。

 LAWS国家試験3次。東京モノレール編。10時に開始してから6時間が経過。現在16時。残り時間は、5時間。羽田空港までの残り駅は8駅であった。 

 つづく。

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