第16話 始発+〇〇時間

「ふあ~よく寝た。」

 上野駅で野宿して、目を覚ました望は、傷も癒え全回復していた。

「あ、やっと起きた。」

「さあ! 朝だ! 上野のクエストを突破しに行こうぜ!」

「それは、まだできません。」

「なんで!?」 

 上野の駅娘が、クエストは出来ないという。

「上野のクエストは、上野動物園のパンダと戦うですが、9時にならないと上野動物園が開園しません。」

「なんだってー!? 始発は動いているのに。パンダのいる動物園が空いていないからって足止めを食らうのか!?」

「他の試験参加の学生たちは始発に乗って、先に進んでいるんでしょうね。」

「困ったな。絶望的だな。」

「そうね。悲しみしかないわ。」

「あなた方の上野愛を感じますね。グーパンチ!」

 望たちが昨夜眠ったのが0時。JRの山手線の始発が5時。望たちが目覚めたのが6時。上野動物園の開園時間が9時なのだった。ということは、望たちは上野駅に約10時間はいることになってしまった。

 LAWS国家試験、開始から24時間経過の9時。望たちは、現在14個目の鶯谷駅を突破して、上野駅にいる。残り時間は5時間で15個の駅を突破しなければいけない。


「やるだけやってみよう! 参加することに意義がある!」

「そうね。かわいいパンダと記念写真を撮りたいわ!」

 理由は不順でも、望たちはLAWS国家試験クエストを続けた。

「ギャアアアー!? 人食いパンダ!? 助けてー!? 逃げろー!?」

 上野のパンダレベル100は、笹よりも人間が好きだった。

「あんなものと戦って勝てるのか!? 終わりだ。クエストなんて、クソッくらいだ!」

 望は、人食いパンダの恐ろしさにLAWS国家試験を諦めた。

「ゆ、許さんぞ! 私の大好きな可愛いパンダさんを人食いにした奴を!」

 希は、理想のパンダ像を汚されて怒っていた。

「こうなったら私も戦うわ!」

「希、おまえ戦えるのか? 武器なんかも持ってないだろう?」

「フッフッフ、フがいっぱい。実は私ももらったのよね。原宿の明治神宮で、女帝の剣を。」

 希は、女帝の剣を高々と振り上げる。

「持ってるなら、最初から戦え!!!」

 望は呆れていたが、望が稼いだ経験値は希も得ているので、希のレベルも100である。

「くらえ! 二人合わせて、レベル200アタック!」

 望と希は、二人で人食いパンダに斬りかかり、見事に倒したのだった。

 LAWS国家試験、開始から25時間経過の10時。望たちは、現在15個目の上野駅を突破。残り時間は4時間で14個の駅を突破しなければいけない。

 つづく。

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