第10話 時間の観念

「いらっしゃいませ! 新宿へようこそ!」

「僕たちは観光客か?」

 望たちは3つ目の駅、新宿にやって来た。電車を降りると新宿の駅娘に出迎えられる。駅娘の外観は、普通に駅員さんの制服を着ているか、新宿なら都庁、渋谷ならハチ公の着ぐるみを着ているような、ゆるキャラであろう。

「新宿のクエストは、この広大な新宿の駅前で、逃げた子猫を探してもらいます!」

「子猫? 新宿の駅前で? 無理だろ。うん。諦めよう。」

 望は、ゲームは好きだが、面倒臭いことは嫌いだった。

「あら? そんなことを言っていいんですか? LAWS国家試験が開始してから5時間が経っています。それなのに、あなたたちは、まだ3つ目の駅。完全に出遅れていますよ。さっさと子猫ちゃんを探しに行ってください!」

 現在は、14時30分。本来なら新大久保、高田馬場を超えて、目白にいるのが平均ペース。優秀な生徒なら7つ目の池袋よりも先に進んでいるだろう。

「ちなみに子猫って、誰の子猫? 東京都知事?」

「私の子猫です!」

「うんな!? アホな!?」

 逃げた子猫の飼い主は新宿の駅娘だった。

「あ、言うの忘れてましたが、外は大量のゾンビがいますから、気をつけて行ってくださいね。よろしく~。」

「僕に死ねというのか!? 何がよろしく~だ!?」

 もちろん新宿の街の人々もゾンビ扱いだった。

「ということで、目覚まし。お前に任せた。」

「どうして私が子猫を探さないといけないんだ?」

「見ての通り、外はゾンビがいっぱいだ。JRSの金属でできている、おまえならゾンビに食べられない。いってらっしゃい。」

「ギャアアアー!?」

 望は、目覚ましを安全地帯の駅の外へ投げ捨てた。

「ホープ、あなたはどうする?」

「私もJRSですが、可愛いお人形さんタイプなので、ゾンビはお断りします。」

「そうね。ゾンビは危ないから、一緒に駅でお留守番しましょうね。」

「お腹も減ったし、駅ビルで何か食べながら待とうぜ。」

「おお!」

 望たちは、駅の外には出ないで、休憩しながら駅で待つことにした。

「子猫ちゃんー! どこだー! くそっ!? 猫の名前ぐらい聞いておけばよかった!?」

 目覚ましは1時間以上、新宿の駅前で子猫を探したが見つからなかった。

「疲れた。もう駄目だ。一度、駅に帰ろう。」

 目覚ましは、駅に帰ってきた。

「ニャー。」

「子猫ちゃん!?」

 駅ではカワイイ子猫が目覚ましを迎える。

「お腹が減ったから、エサを貰いに子猫ちゃんが帰ってきました。めでたし、めでたし。」

「めでたくない!?」

 望たちは、新宿のクエストを突破した。

 現在16時。まだ3つ目の駅。LAWS国家試験終了まで、あと22時間。

 つづく。

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