第3話 16才になったら
「望、あなたも今日からLAWS国家試験を受けるんだから、合格してお母さんに楽をさせてよね。」
望は、布団から起きて朝食を食べている。パンと卵と牛乳といった質素な朝食だ。
「期待しないでよ。試験は何をするかも分からないし、僕はプログラミングも、ドローンの操縦も苦手なんだから。LAWSに入社するなんて無理だよ。」
LAWS国家試験とは、現代でいうところの国家公務員試験である。合格すれば生活は安泰になる。16才の高校1年生から受験することができる。どんな試験をするかは分からない、謎の試験である。
「はいはい。期待していませんよ。」
望の母親は、言葉とは逆に息子に期待していた。
「充電完了! ふう~、美味しかった!」
望のJRSはスマートフォン型なので、USBコードを本体と充電器のコンセントをつないでパワーを回復させる。
「目覚ましも乾電池にすれば、毎日充電しなくてもいいのに。」
望の母親のJRSはAI搭載のぬいぐるみの女の子なので、単三電池2個で動いている。1カ月に1回も電池を交換すれば大丈夫である。
「望、LAWSの国家試験を受ける年になったか。ウルウル、感動。」
「父さん、まだいたのか!? 会社に遅刻するぞ。」
望の父親が現れた。普通の会社員である。
「大丈夫だ。私のJRSのファーザーが出勤の身の回りのことは準備してくれているから。」
「まったく便利な、人工知能様だ。」
AIとは、人工知能のことである。
「本当だな。父さんの子供の頃は、AIは世界を征服した悪魔と多くの人々に恐れられていた。人間を監視して反乱分子を排除するために、街中にはマシンガンを装備したドローンが至る所に飛んでいたものだ。」
望の父親の子供の頃の話である。
「嘘つき。」
平和な世の中に生まれた望は、父親の昔話を認めない。
「嘘つきじゃない!? その名残で、今も1人に1台JRSが与えられている。昔は人間がAIに歯向かわないように監視者として、AIロボットに24時間中、監視されていたんだからな。あれから3、40年くらいだが、良く平和になったものだよ。ワッハッハー!」
「絶対に、嘘。」
望は、父親の言うことを信じられなかった。
「望パパ!? 早くしないと会社に送れますよ!?」
望の父親のJRSのファーザーが呼びに来る。
「なんだって!? 急げ!? 遅刻!? 遅刻!?」
望の父親は慌てて出勤していった。
「監視が要らないくらい人間が劣化したってことだな。アハハハハ。」
「望。あなたも遅刻するわよ?」
「なにー!? 母さん! 行ってきます! いくぞ! 目覚まし!」
「待てー!? 置いてくな!? 望!?」
望は、学校に向けて旅立った。
つづく。
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