第4話 腹減りし時
「シグマくん、よくそんなに食べれるわね……」
アンテナ少女が少し引き気味の目でシグマを見る。
それもそうだ。
彼の目の前には既に空になった皿が山積みされている。
元々大食いなシグマが、森で迷子になっている間、ずっと空腹で倒れそうだったのだから。
その反動で膨れ上がった食欲は、店の食材がいつ尽きるかと店の人も不安そうな目で彼を見るほどだった。
シグマ以外の3人は一人前の食事を食べ終えている。
シグマ待ちというわけだが……。
「店員さん!おかわり!」
「も、申し訳ございません……もう食材が……」
ついに尽きたかと言わんばかりにアンテナ少女がため息をつく。
「ほらシグマくん、お金払ってさっさと行くわよ」
「よし、次の店に行こう!」
「行きませんっ!」
「ぐふっ!?」
アンテナ少女の拳がシグマの腹にねじ込まれた。
「ご主人様のお腹は底なしでしゅ」
「そうね、底なし。私の眠りも底なしになって欲しい……Zzz」
「こら!ベガ、寝ちゃダメよ!」
「寝てない……脳活動を一時的に低速化しているだけ……Zzz」
「寝てるってことじゃないの!ほら、起きなさい!」
そんなやり取りをしながら去っていく4人を、何故か店の中で沸き起こった拍手が見送ってくれた。
大食いの賞賛と言うやつだろうか。
ちなみに、森から出る道の途中でシグマは3人に自己紹介をしてもらった。
アンテナ少女こと、棒が突き刺さったままの赤髪赤眼少女がデネブ=リリルム。
ずっと半目でねむそうな表情をしている銀髪青眼少女がベガ=メルティウス。
シグマの3分の2くらいの身長しかない黒髪黒眼幼女がアルタイル=ネビル。
長いのでアルと呼んで欲しいとのこと。
名前以外の情報は戦闘シーンが来たらわかると言っていたが、シグマはいまいち理解出来ていない。
彼女らが一体、どんなふうに戦うのかを把握しておくことが戦いをいちばん有利に進めると思っているが、頑なに説明を拒む彼女に、それ以上追求することは出来なかったのだ。
そんなこんなで食事を終えた一行は、公園のベンチに座って頭を抱えていた。
厳密に言うと、頭を抱えているのはデネブだけなのだが。
「シグマくんが大食いなせいで、もう旅の資金が尽きちゃったじゃない……」
「仕方ないさ!腹が減ってはなんとやらって言うだろ?」
「あなたの場合は減りすぎなのよ。もう、どうやって魔王の城まで行けって……ん?」
デネブは風に舞って飛んできた1枚のチラシを拾う。
その内容を見るなりすぐに彼女は目を輝かせた。
「これよ!」
そう言ってデネブはシグマの顔にそのチラシを押し付ける。
「ちょ、なんだよ!そんな近かったら見えないって!」
そのチラシを奪い取って見てみると、気になるのかベガとアルもそれを覗き込む。
「ギルド依頼?」
「そう!各街に置かれた地方ギルドの手に余る仕事を代わりに終わらせると、アイテムやお金が貰えるのよ」
「旅始まり早々お金の無くなった俺たちにうってつけの仕事だな」
「お金が無くなったのはご主人様のせいでしゅ」
「そうよ、シグマくんの責任なんだから、ギルド依頼では活躍してくれることを願っているわよ」
「……Zzz」
約3人からのプレッシャーを感じ取ったシグマはたじろぐと共に、大きなため息をついた。
「俺、旅初めて2日目なんだけど……」
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