第2話 祠に封印されし者
「あ、あれ?おかしいな……」
一本道の森と呼ばれるその森は、名前の通り一本道。
入口から出口まで迷い用のない綺麗な一本道だった。
ただ、この森の入口にはひとつの注意書きの看板が立っている。
そこには『決してながら歩きはしないこと!!!』と書かれているのだが、その理由はいくら一本道でもほかのことに注意がいっていては道をそれてしまう。
そうなれば、道を見失い、迷い、永遠に森から出られなくなるかもしれないからだった。
シグマもその看板を見る度に、エクスクラメーションマーク【!】が3つもついているから相当大事なことなんだろうなと思ってはいたのだが、つい初めて握った剣の感触に溺れてしまい、道をそれてしまった。
空はもう真っ暗。
母の持たせてくれた2つの袋のうち、片方に入っていたおにぎりはもう食べ尽くしてしまった。
もう片方には錆びたコインが3枚入っていて、それが何なのかはシグマにはさっぱりだった。
かなりの時間歩いているのに、森の出口は見当たらない。
無造作に並ぶ木々の合間を歩いていく中で、棘のようなものが刺さったりすることもあって、既にシグマは傷だらけだった。
もうそろそろ何か食べるものがないと、歩きっぱなしのシグマは倒れてしまう。
追い打ちをかけるかのように雨まで降り出した。
シグマは無意識に歩みを早めていた。
その時、シグマの目の前の視界が開けた。
木々の密集地帯から、木の一切生えていない場所に出たのだ。
でもそこは出口ではなく、何者かの手によって意図的に作られた円形の広場のような場所だった。
そしてその真ん中には遺跡の入口のような物が見える。
シグマは雨宿りをするためにその遺跡の階段を降りて行った。
魔物が住み着いている可能性もあるので、しっかりと右手に剣を握って、慎重に階段を降りた。
特に何があるでもなく、フロアがあっては階段を探して降りるのを繰り返していると、6回目の階段がやけに長いことに気がついた。
シグマの足音だけが壁に反響して彼の耳に入っていく。
それ以外には何も聞こえない。
10分ほど階段を降りたところで、やっとフロアについた。
そこは天井が見えないほど高く、そしてとても広い空間だった。
石造りの壁や床には所々にツタやコケが蔓延り、お世辞にも綺麗と言える空間ではなかったが、特に何か目立つものがあるわけではなかった。
だが、そのフロアの最奥。
おそらくこの遺跡の最奥である場所には、3つの祠のようなものが立っていた。
それが何なのかを確かめるためにシグマが祠に手を添えた瞬間、母の渡してくれた袋の中にある3枚のコインが光を放ち始めた。
それに共鳴しているのか、それぞれの祠の真ん中にある丸い窪みも、それぞれのコインと同じ色に輝いている。
シグマは恐る恐るそれぞれのコインを祠の窪みにはめてみた。
すると――――。
ドカァァァァァァン!!!!!
とてつもない爆発音と共に襲いかかってきた爆風で、シグマは背中側に大きく飛ばされてしまい、腰を強く打ち付けた。
「いててて……ん?」
腰をさするシグマの視界に、綺麗な手が映る。
「大丈夫?」
そう言いながらシグマの手を掴んで立ち上がらせてくれたその少女の頭の上には、祠の上についていた棒がアンテナのように突き刺さっている。
「も、もしかして祠の中から出てきた!?」
「うん、そうだけど?あと、この2人もね?」
そう言って祠の中から出てきた少女が示した彼女の背中側。
そこからさらに2人の少女が現れた。
「ふわぁ……まだ寝足りないのに……」
「ダメでしゅよ?ご主人様が現れたんでしゅから、ちゃんとあいさつをしにゃいと」
そう言いながら現れた2人の少女は、棒の突き刺さった少女の隣に並んでシグマを見つめた。
そして、3人は口を揃えて行った。
「「「私たちの封印を解いたのはあなたですか?(でしゅか?)」」」
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