視肉 ②
劉郁が霊廟の中に入ると、道士はさして驚いたようなふうでもなく、劉郁に手招きをして焚き火の側へ座るように言った。
「迷ったのかね?」
道士が劉郁に尋ねた。劉郁は黙って頷く。
「ふむ」
道士が焼いていた肉のようなものを頬張る。かれはそれを美味そうに咀嚼し、飲み込んだ。そして「ほぉ」と感嘆の溜息をついた。劉郁は思わず唾を飲みこんだ。
「すいませんが」
辛抱堪らず、劉郁は道士に尋ねた。
「道士様。わたしは朝から何も口にしておりません。もしよろしければ、その肉を分けては頂けませんか?」
道士は破顔し、持っていた肉を全て劉郁に手渡した。
「よろしいんですか?」
「ああ、好きなだけ食うがいい」
腹が減っていた劉郁は、むしゃぶりつくようにその肉を食べた。濃厚な肉の味が口いっぱいに広がる。今までに食べたどんな肉よりも、その肉は美味かった。
「こんなに美味い肉は食ったことがない」
口にまだ肉が入っているのに、次から次へと劉郁は肉を頬張る。
「そんなに急がずとも、まだいくらでも残っておる」
道士が笑いながら言った。その言葉を聞きながらも、劉郁は無我夢中でその肉を貪った。焼きあがった肉から、どんどんと口に運んでいく。あらかた食べ終わると、かれは満足げに微笑み、道士に礼を言った。
「しかし、こんなに美味い肉は食ったことがありません。
これはいったい何の肉なのですか?」
劉郁が尋ねると、道士は伸びるに任せた髭を撫で「ほっほっほ」と笑った。
「視肉というものの肉だ」
「視肉?」
「ついてくるがよい」
そう言うと、道士は霊廟の奥へと劉郁を導いた。
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