第10話
あたしもとうとう三年生になった。
あと一年したら卒業なんて、なんか変な感じだ。
それにまた後輩が増えた。みんな可愛くて良い子だ。ちっちゃいし初々しい。
だけどこの後輩と達もそう長くは一緒にやれない。二ヶ月したら最後のインハイ予選が始まるからだ。
あたしはやる気満々だった。このチームは去年より強いと胸を張って言える。
みんな練習頑張ってるし、あたしも人生で一番努力した。
なによりもみんなが全国を目指せたのが大きい。
元々部の目標としてははそうだったんだけど、誰かが率先して言うってわけでもなく、ただ漠然としたイメージとしてあっただけだった。それをあたしが事ある毎に全国全国と言うようになると、みんなもその気になってくれた。
あたしは全国に行きたかった。
吉良君との約束もあるけど、このメンバーで少しでも長くバレーをしたかったんだ。
五月までにあった試合や大会はすごく調子よかった。
周りの高校からも今年はうちの学校が全国に行くんじゃないかって噂されてたくらいだ。
あたし達としても手応え十分で、すごく自信になった。
そしてインターハイ予選が始まった。
一回戦からあたし達は順調に勝ち進んだ。
練習の成果を出しながら、余力を残して勝っていく。
県内の有力校と戦っても臆せずに勝利をものにした。
試合が進むごとにあたし達はこれ、いけるんじゃないっていう気持ちになっていった。
準決勝に残った四チームはどこも優勝候補と言っていいところだった。
それでも一番勢いに乗ってたのは間違いなくうちだ。
接戦をものにして、結局一セットも取られず、勝ちへの執念を見せた。
そして迎えた決勝。
相手は去年負けたチームだ。
だけど戦力として負けてるなんて全然思わない。むしろあっちの方が今のうちを怖がってるはずだ。
勝てる。勝って吉良君に会いに行くんだ。
今思えば、あたしは浮き足立っていたのかもしれない。
大会で優勝なんてしたことないあたしは未知の世界に手探り状態だった。
それでも序盤は上手くいった。
予選からの勢いをそのままに一セット目を大差で取れた。
だけど二セット目は相手が修正してきた。こっちはやりたいことができず、惜しくも取られた。
そして運命の三セット目。
相手の修正についてきたあたし達は互角の戦いを繰り広げる。
最初からずっとシーソーゲームが続き、ミスをしたら負けだってことをみんなが理解していた。
それでも負けるなんて全然思ってなくて、デュースにもつれ込んだ。
こっから先は精神力の勝負だ。
そう思っていた矢先、後輩がサーブミスをした。
「大丈夫。大丈夫。次、次!」
みんなが声をかけた。あたしもそうだ。
だけど、マッチポイントだって思うと吉良君との約束が頭に過ぎった。
『インターハイで会おう』って言葉がリフレインする。
勝ちたい。吉良君との約束を守りたい。
ずっとそう思っていたあたしの心が少し傾いた。
勝たせて。吉良君と会わせて。
懇願するような気持ちはプレーに出た。
スパイクを打ちきれず、相手のボールになる。
そして最後、泣きたくなりながらあたしはブロックの為に跳んだ――
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