第5話

 そうこうしてる内に二年生になった。

 可愛い後輩も入ってきて、ちょっと大人になった気分だ。

 みんなあたしより小さくて羨ましかった。でも後輩からは大きくて羨ましがられた。

 この頃になると試合にも結構出られるようになった。半分レギュラーみたいな感じ。

 でもレギュラーかなって思ったら外されたり、次の試合は無理かもって思ったらフル出場だったり。そんな日々が続いた。

 試合に出られるのは嬉しいけど、そこまで出たいって気持ちがあるわけでもない。出られたらラッキー、みたいな。

 そこの貪欲さが足りないのは分かってるけど、できればみんなで仲良く楽しくしたいと思ってる。

 そんな風にフワフワしてるからか、先輩からも同級生からも後輩からもいじられるようになっていた。

「マッキーはのんびりしてるなあ」

「オキマキっていっつも笑ってるよね」

「マキ先輩って大きいのに可愛いですよねえ」

 とかなんとか部活仲間からは好き勝手言われてる。あだ名もいっぱいできた。

 あたしも基本のほほんと笑ってるだけで、必死さなんてないのもあるんだろう。いや、頑張ってはいるんだけどね。

 いじられてることを吉良君にメッセージで送ると

『分かる(笑)』

 って返ってきた。

 いや、分かられてもむかつくんだけど。しかも笑ってるし。

 部活は大変だけど、楽しかった。

 帰りにファミレス行ったり、クレープ食べたり、コンビニ寄ったり。

 ……なんか食べてばかりだけど楽しかった。

 恋バナなんかもよくしてる。男子と付き合ってる友達もいたし、先輩が好きな後輩もいた。

 あたしはそれを顔を赤くして聞いてた。好きな人を聞かれても今はいないとか言ってるけど、あたしは嘘が下手だからいつも怪しまれていた。

 ある日。みんなで小さなぬいぐるみを作ることになった。

 部活のマスコットを作って、それを鞄に付けるんだ。

 で、そのマスコットのモデルがなぜかあたしになった。

 髪が短くてニコニコ笑ってて、ユニフォームを着た赤丸ほっぺの女の子。

 それをみんなで作って鞄にくっつけてる。あたしは自分のと後輩が作ってくれたので二個持ってた。

 なんで自分で自分のぬいぐるみを鞄に付けないといけないのって疑問はあるけど、みんな楽しそうだから仕方ない。

 みんなが仲良くなるとチームワークもよくなってきて、結構勝てるようになってきた。

 県内の強豪校とかと試合しても普通に勝てちゃう。

 これは全国見えてきたなって思うとさらに雰囲気が良くなって好循環が続いていた。

 あたしも調子が良くて、苦手だったブロックもサーブも決まるようになってきた。

 高校生活に慣れてきたってのもあると思う。責任だって三年生よりは小さいし、受験があるわけでもない。

 今思い返せば二年の最初が一番楽しかった時期だと思う。

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