二人だけのカラオケボックス

「ここのカラオケでいい?」

「え…あ、うん!いいよ‼」

「じゃあ入るか」

「うんっ」


 「いらっしゃいませ~二名様でしょうか?」

「はいそうです」

 「会員証はお持ちでしょうか?」

「ないです」

 「それでは一般ですね」

「はい」

 「お時間はどうなさいますか…?」

「うーん…どうする?」

「えっと…蛍斗が決めていいよ…?」

「わかった」

「じゃあ…フリータイムで」

 「でしたらお時間は夜の8時までとなりますよろしいでしょうか?」

「いい?」

「いいよ」

「じゃあそれで」

 「了解しました…はいこちらを…突き当りを右に行ってもらって205号室になります」

「はい」


 「ここだね?」

「そうだね~」


 「ふぅ…」

「蛍斗、カラオケ初めて…?」

「いや、親となら何回か来たことあるけど…」

「そうなんだ…あ、そうだ‼ ドリンク頼む?」

「そうだなー、頼むか…のどが渇いたし…じゃあ頼むね?」


蛍斗は室内にあった電話へと手を伸ばした


 「ちょっ‼ 蛍斗…⁉」

「え…?どうした…?」

「いや!どうした?じゃなくて…なんで電話しようとしてるの…?」

「え?いや、ドリンク注文するじゃん…」

 「いや…今はタブレットで注文できるから!」

「タブレットで…?」

「そうだよ!ほら…?これ」

「これで…?」

 「そう、これが注文専用のタブレットだよ?」

「へぇ…詳しいんだな…?」

「まあ、友達とよくカラオケ来てたからね~」

「ほぉ…じゃあわからないことあったら聞けるな」

 「まあね?でもほとんどないでしょ…?」

「まあ、確かに…カラオケなんてどこもほとんど変わらないからな…」

「うん…?変わるとしたら曲の数…採点の方法…?とかかな…?」

「カラオケガチ勢じゃん…」

「いや、そこまでだよ…?」

 「じゃあ、注文するか?何が飲みたい…?」

「えっと…じゃあ、この生クリームミルクティーかな~?」

「了解…っと…俺は…」

「蛍斗はこれでしょ?ほうじ茶!」

「なんでだよっ…‼」

 「なんか雰囲気が?飲んでそう」

「どんな雰囲気だよ…それ…」


笑っている二人の距離はどんどんと近づいていった…


 「ポテトも頼むか?」

「うんっ…頼も!」

「何味がいい…?」

「えっと…じゃあこのバター醬油味がいい!」

 「おぉ…それは美味そうだな、じゃあそれで注文完了っ…」

「蛍斗は普段なに歌うの…?」

「えっと…そうだな…特に決まったジャンルはないかな…なんかいい曲があればそれ歌ってるって感じかな…?」

「へぇ…J-POPとかも歌うの…?」

「まあ、多少は歌うかな?でもがっつりとは知らないから…桃乃はどんなのを歌うの?」

「うちは…、基本…アイドル系かな?」

「アイドルかぁ…なるほどな…」

「蛍斗はアイドルとか聞かない?」

「そうだな、ほとんど聞かないかな…?でも有名な曲とかだったら知ってるよ」

 「じゃあ後で有名な曲、歌ってあげるね!」

「おう、楽しみにしてる」

こういう場合はどっちから歌うんだろう…

 「蛍斗?どうする?どっちから歌う…?」

「どうするか…?」


 「「「じゃあ、先歌っていいよ?」」」


二人はハモったように喋った


「…え?いや、先歌っていいよ?」

「そ…そう?じゃあ先歌うね?」

「お…おう。」


桃乃は自分の得意な曲を熱唱した


 パチパチパチパチ


「蛍斗!どうだった?」

「桃乃は歌が上手いんだな」

「そう?えへへ」

「おう」

 「じゃあ次は蛍斗が歌う番だよ!」

「そ…そうだな。」

さて…なにを歌うか…最初は適当に歌いやすい歌でも歌うか…


蛍斗も得意な曲を歌った

立ちながら歌っていた蛍斗が桃乃の隣に座ろうとした時だった…

カンッ‼と机の脚に自分の足が突っかかり体勢を崩し…そのまま桃乃の方へ倒れ込んだ

ソファーの上で桃乃を押し倒す形になった


「…っ⁉ ごっ…ごめんっ!」

「えっ…あっ…うっ、うん!全然平気!」

「ごめん…‼すぐどくね!」

 「あっ‼ う…うん…」


隣に座った二人の間には少し気まずさが残った

そうして心行くまで歌い切った二人はカラオケを後に家に帰った


そしてついに明日から夏休み!

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