可愛いくせに友達がいないらしい

 昨日はあれから何事もなく初葉と二人で帰った…しかも!今日学校に一緒に行く

 約束をしてしまった…。もうそろそろくr…


 「ピンポーン」


家全体に響き渡るインターホン


「…っはやい‼やべぇまだ着替え途中だ!!」

 「蛍斗~お友達来てるわよ~」

「うーん!すぐ行くー」

 「早くしなさーい」

「はーい」


「髪型大丈夫かな?まだかなぁ蛍斗君…」


 はあ~緊張してきたー女の子と学校行くなんて人生初だからみんなから変な目で

 見られたりしないかな…。

「よし行くか!行ってきまーす」

 「行ってらっしゃーい」


玄関の扉を開けるとそこには頬を赤らめた初葉が立っていた。


「お、おはよう」

「お、おはよ」


なにかぎこちない二人、まるで付き合いたての恋人同士かのようだ…


「行くか…」

「そうだね、行こう」

 あああああああ!どんな会話していいかわかんねえええ…。こういう時はどんな

 話をしたらいいんだろ…そうだ好きな食べ物でも聞くか…。少し安直すぎたかな

「あ、あの」

「あ、あの」

「ごめん!さき言って!」

「いや蛍斗君が先に言っていいよ?」

「いや俺の話大したことないからさ…」

 まさかの被りですか…こんなことなら話しかけなければよかったな…

「そ、そうなの?」

「うん、だから先に話していいよ」

「わかった、あのさ…」

「うん」

 「昨日はありがとね、蛍斗君は私の命の恩人なんだなって思ってさ…」

「う、うん…初葉がケガしなかっただけましだよ…」

「本当にありがとうね自分の命を顧みずこんな私を助けてくれるなんて…」

「別に気にすんなよ。俺はただ勝手に身体が動いてただけなんだから」

「あのさ私さ…」

「うん?どうした?」

「蛍斗君の事…す…」


 初葉の口に出したその言葉は車によってかき消された。


 「ん?ごめん聞き取れなかった…もう一回言って?」

「んーんっ。やっぱり何でもないっ」

「なんか気になるなぁ~」

「ほらもうすぐ学校だよ?蛍斗君って何組なの?」

「初葉の隣の組…二組だよー?」

「えっなんで隣だって知ってるの?」

 「えっだって傘の柄に二年三組って書いてあったもん」

「あ、そういうことかっ」

 なんてくだらない会話をしているうちに学校へと着いた。



学校ではいつもと変わらない日々だと思っていたが……。


―――そう思っていたのは蛍斗だけだった―――


もう昼休みか…売店でも行ってなんか食うか…それとも食堂で食うか…迷う……。


クラスのみんなはいつもどおり俺をはぶいて遊んでいる……かに見えた

売店に行くかと席を立とうとした時。俺はあることに気づいたそれは…、


   「「「みんなが俺に注目している」」」


 えっなんで、なんで皆さん俺を見ているの?新手のいじめ行為か…?おいおいな

 んなんだよ、みんなからの視線が痛てえよ…、レイザービームを一気に打たれて

 いるみたい痛い…痛い…痛すぎる…。

ん…?みなさん?これ俺を見てねえな……!!!なんだ?なんだ?俺の後ろ…か?


 振り返ってみるとそこには初葉の姿があった…


「え、初葉…?」

「お昼、一緒に食べよ?」

「う、うんいいよ」

 そういうことか!こいつら…俺がいつも一人だからこんな可愛い子が俺の後ろに

 立ってたからびっくりしてるのか……。

「なんで俺なんかを誘うんだ…?友達と食べればいいのに…」

「私…蛍斗君以外友達いないんです…」

「そ…そうなのか…」


 なんか申し訳ございません。


「じゃあ一緒に食べるかっ、俺、今から売店行くけど初葉はどうする?」

「じゃあ私もついていくっ!」

「おう」


 俺と初葉の周りではクラスメイトがざわついていたが俺には初葉の声しか聞こえ

 なかった…。


 「全部で420円です」

「はい」

 「はいちょうどですねありがとうございましたー」

「あれ?初葉は買わなくていいの?」

「私はお弁当があるから買わなくても大丈夫ーっ」

「そうなのかじゃあどこで食べるか」

「どこでもいいよ私は蛍斗君についてくから」

「じゃあ屋上でも行って食べる?」

「うんそうしよー」

 こんな会話をしていると、俺たちの声をかき消すかのような爆笑が後ろから聞こ

 えてきた…。


 「はっはっはでさああ~どーなのよ?最近、彼氏とはさあ~??」

 「はぁ~?うち彼氏なんていねーしぃ~!!」

 「嘘つけよぉ~この前〇〇先輩に告白されてたろ~がよお!!」

 「そんなの振ってやったわああ!!!はははっ!!」

 「桃乃ももの!お前!もったいねえええええ!!!イケメンだったじゃん!」

 「いやぁうちが惚れない限りイケメンが何度告白してきても振りまくるけんね」

 「はぁ~?桃乃!お前!鬼かよ!!!はっはっは!!!」


あれは、俺たちとは真逆の生き物…『陽キャラ』だ…。俺とは一生縁がない存在だ

「斗君…?」

「…。」

「蛍斗君……?どうしたの…?」

「…っえ、あ、いやなんでもないんだよ…さあ行こ…」

「うんっ!」


 「今日はいい天気だねぇ!」

「おうそうだな~…あそこのベンチ空いてるぞ座るか」

「うんっ!」

「春って言ったら外でのランチだよなあー」

「そーだねーっ」

「っんな」

 「蛍斗君…私ね高校生になって良かったって思ったこと一つもなかったんだけどさ

 蛍斗君と出会って高校生になって良かったって初めて思えたんだ…」

「そうかそれならよかった、俺も初葉に出会ってから高校生になって良かったって

思えた…」

「な、なんか照れる…」

「俺も結構照れてるんだぞ…?」

「へへへ~じゃあ俺にこれ上げるっ!」

「んー?」

「お弁当のおかずのイカさんウインナー」

 え…⁉なにそれ…普通タコさんウインナーじゃない⁉…イカさん⁉えっ…。

「イカさんウインナー嫌い…?」

「いいや、そんなことないよ?イカさんウインナーおいしいよね~」

 うん。食べたことないからわからないけど。普通のウインナー…?だよな…?

「はいあげる?」

「ありがと。お、おいしい。」

「よかったぁ~‼」


 うんっ普通のウインナーでした!ごちそうさまでした!

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