ー8

 何事もなく席に座ったゼロに何も言えなくなっているテロリスト達、それもその筈である……銃弾は確かに命中していたのだから。


 

列車の中に流れる異様な雰囲気、そんな事を全く気にしていないのかゼロは捕まえられているアリスとティアを見た。


 

「どうしたお前等、座らないのか?ああ……なるほど」



 全く状況を理解していない、興味がなかったのだろうかゼロはようやく納得したように声を漏らすとティアに小声で話しかける。


 

「おい、痴漢は黙ってたらつけあがるぞ?助けてやりたいがこういうのは自分で対処しなければ……」


 

「違うわよ馬鹿!テロよ!何でそうなるのよ!」


 

 見当違いな答えに対してアリスが怒鳴ると、その怒鳴り声でテロリスト達はハッと我に返る。


 

「て、てめえ!どうやってこの列車に……てかどうして生きてやがる!」


 

怯えるように銃口をゼロに向ける男、ゼロは銃を見ると辺りを見回してようやく理解したように頷いた。


 

「ああ……なるほどな、とりあえずその二人を離せ。これは返してやるから」


 

 ゼロは握った手を前に出して開くと、魔力を圧縮する事で出来た銃弾がバラバラと地面に転がり落ちては消滅してしまった。


 

「ひっ……」


 

「聞こえなかったか?早く離さないと手が無くなるぞ」


 

 そう言ったゼロの口元が怪しく緩むとアリスとティアを捕まえていた男は慌てて離れた。


 

「まあ座れ……俺の初授業だ」



「う、うん……」



「……はい」


 

 ゼロの言葉に二人は大人しく頷き、ゼロは正面の席に腰掛けた二人を見て微かに微笑むと周りのテロリスト達を見渡した。

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