ー3
結局新任の先生を迎えに行く事になったアリスにティア。
その日の授業は受けなくていいと言われ、列車を乗り継ぎ学園長に指示された場所へと向かった。
着いた場所は田舎の街、人が少なく民家以外特に目立った建物が無い場所だった。
「随分と寂しい場所ね」
周りを見渡しながらアリスがボソリと呟くと、隣のティアは学園長から貰った地図に目を通して遠くを見た。
「向こうの方角みたいだね……行こうアリス」
「うん」
ティアの言葉に頷くと、二人は街外れの方角に向かって歩き出した。
ただでさえ少ない人通りなのに、学園長の書いてくれた地図の場所が近付く頃には全く人を見なくなっていた。
少し薄気味悪い雰囲気が出てきた時、ポツンと一つ民家が建っているのが見えティアが指差した。
「あれだね」
「ちょっと薄気味悪いわね……」
民家の扉の前で立ち止まり、アリスは息を呑むと扉を軽くノックした。
しかし、返事はおろか人の気配もせずアリスとティアは顔を見合わせた。
「留守かな?」
「ゼロ先生!居ませんか!」
ドアをノックしながらアリスが学園長から聞いた教官の名前を口にすると、中から音が聞こえゆっくりと扉が開いた。
「んだよ……誰だ?人が二日酔いで苦しんでんのに」
『……………』
扉が開き、中から現れた男性を見てアリスとティアは言葉を失ってしまった。
身長180cm程の長身で耳より少し伸びた綺麗な白銀の髪、タバコをくわえてアリスとティアを見ると目を細めた。
澄んだ黒い瞳とダルそうにしているが美男子な男に見つめられ何も言えなくなってしまう二人。
長い沈黙、それを崩すように男はくわえたタバコを吸うと煙を吐き出した。
「けほっ!ごほっ!……何するのよ!」
吐き出した煙はアリスの顔にヒットすると、アリスは咳き込みながら涙目で男を睨みつける。
「ああ…悪い悪い、で?何か用か?」
「あ、あの……私達シャルロット学園長から貴方を連れてくるように頼まれたんです。ゼロ=マグナスさんですよね?」
悪いと言いながら全く悪びれていない男に怒り心頭のアリスにティアが割って入ると、男はあぁ…と思い出すように空を見た。
「なるほどな……確かに俺はゼロだが、やる気ないからお前ら早く帰れ」
「なっ!」
「あ、あのっ!」
それだけ言って再び家の中に入ろうとしたゼロにティアは慌てて呼びかけた。
「何だ?」
「どうしても……無理ですか?」
「ああ、無理だ。帰りな」
「行こうティア、こんな最低な奴!」
ティアの最後の呼びかけにもNOサインを出し、煙草の煙を顔面にかけられて怒っているアリスはティアの手をとり来た道を引き返し始める。
去って行く二人の後ろ姿をゼロは振り返り見つめると口を開く。
「おい、お前達名前は?」
「ティア=テスタロッサです」
「ティアは素直すぎるよ!名前なんて教える必要ないのに……アリス=クレメンティスよ!」
素直に名前を口にしたティアにアリスが言うも、ティアはなだめるように教えよう?と言うと渋々アリスも名前を口にして歩き去った。
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