Biscuit de Savoie③ 〜ビスキュイ・ドゥ・サヴォワ〜

 ビスキュイ・ドゥ・サヴォワは、14世紀フランスのサヴォワ地方で生まれた。サヴォワ家の伯爵が、雪が降り積もる彼の城をイメージして専属パティシエに作らせたものだと言われている(諸説あり)。ビスキュイ・ドゥ・サヴォワに粉糖がかけられているのは、そのためなのだ。この菓子は、それを実にうまく表現している。

 見た目だけでなく、味も実に良いものだ。外側はサクサク、中はフワフワ。私が初めてこれを食べたときは、感心したものだ。その感覚を一言で言うならば、新感覚。これが妥当だろう。

 そのほかにも讃えるべき点がある。作り方も簡単なのだ。材料は卵・グラニュー糖・薄力粉・コーンスターチ・バニラビーンズ・バター(型に塗るもの)のみ。卵黄を別だてして、バニラビーンズを入れる。次はメレンゲを作る。薄力粉と卵黄をと混ぜて焼くだけ。簡単すぎる。このパティシエには頭が上がらない。

 そんなことを考えていると

瑠璃るりさん?」

と声をかけられた。顔をあげると、おばあさんがサヴォワを乗せたお皿を持って目の前に立っていた。

「せっかくだから、食べていってくださいな」

彼女はそう言い、ステンドグラスの窓の下にあるテーブルにお皿を置いた。

「俺も食べていいっすか?!」

いつきが目をキラキラさせておばあさんを見上げていた。不意にも『可愛いな』と思ってしまった。おばあさんは少し笑ってから

「えぇ、いいですよ。今お茶を煎れますから」

と穏やかに言った。

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甘いひと時を 房成 あやめ @fusanariayame

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