②
『せんせーい!どうでしたあ?読んでいただけましたあ?』
由美子さんがSkypeでそう話しかけてきたのは、メールが送られてきた次の日だった。相変わらず甘ったるいような粘っこくて嫌な声だ。
「メールありがとうございます、まだ一つしか読んでいませんけど」
当たり前だ。専業主婦の由美子さんと違って、私には仕事がある。SNS漫画の更新はあくまで副業、趣味のようなものなのだから。
『ええっ!早く読んでくださいねぇ、そんなに長くないんですから。ところで、どうでしたあ?』
「ええ、まあ、怖いと言えば怖いですけど……正直ありきたりですよね。実話系怪談で何回も見たような内容です」
田舎で怖い目に合う、白い得体の知れない何かを見る、そのあとなんらかの不幸が起こる。ネットの怖い話でいうと「くねくね」の類型と言えるだろうか。
「それに最後の『いぬる』とか祖父母の不幸とか……いぬるって方言で帰るという意味ですよね。要は神棚を粗末にしたから神様が去ってしまった。だから不幸が起こった。ちょっと説教臭いというか」
『イヤッ』
由美子さんが突然大きな声を出す。
「どうしたんですか?」
『いえ、大丈夫、大丈夫です。ちょっと虫が飛んできちゃって。もう殺したから大丈夫』
「虫って……本当に大丈夫ですか?」
そう確認してしまうレベルで尋常ではない叫び声だった。
『……大丈夫ですから。それより先生、それは序の口ですから』
由美子さんはウフフ、とわざとらしく笑った。
『早く全部読んでくださいねぇ、そしたら怖いってわかりますから。感想、楽しみにしてますねぇ!』
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